易しい言葉で理解する雅で上品な昆曲(昆曲楽器図鑑)

昆曲の背後の芸術家といえば、その伴奏をする囃子方も語るに十分値する存在だ。以前は上演時に囃子方は最初から最後まで舞台上にいたため、慣習として「場面上の」と呼ばれていた。また、「場」という言葉も昆曲の囃子方の各種演奏楽器を指す総称であり、さらに細かく「文場」と「武場」の2種に分かれている。例えば竹笛、三弦、鼓と板などの中国の伝統楽器の伴奏のもと、昆曲役者たちの一つ一つの動作、姿勢、吟唱と台詞回しは全てメロディとリズムとぴったりと合い、最も優れて美しい境地へと昇華するのである。

・文場

「文場」とは昆曲の囃子方の一種で、「武場」と対になる存在であり、「吹く」「弾く」の各種管楽器・弦楽器の演奏者のことを指す。その役目は主として旋律を奏でることである。文場は曲笛をメインとし、そのサポートとして笙、簫、三弦、提琴などがある。

曲笛

管楽器であり、昆曲の文場における主奏楽器でもある。竹製で、指穴には芦や葦の茎内部の薄皮が貼られており、これがそのはっきりと澄んで甘く美しい音色の主な原因の一つである。演奏時、いっぱいに吸いこんだ空気を等しく吐き出す必要がある。音色は「太く、はっきりと、明るく」と「柔らかく、丸く、しっとりと」の使い分けが重んじられる。

小三弦

撥弦楽器であり、弦が三本張られていることからその名がついている。昆曲においては主要な伴奏楽器である。小三弦はその誕生から現在に至るまで二千年の歴史を持ち、その四角形の胴には両面に大蛇の革が張られている。その音色はくっきりはっきりとしていて、伴奏のなかで豊かな音色を奏でる。またリズムのコントロール役を担い、昆曲の囃子方の中心的存在である。

提琴

擦弦楽器であり、「提胡」とも呼ばれる。昆曲特有の伴奏楽器の一つである。その円形の胴はヤシの実の内果皮を利用しており、そこに薄く柔らかい木板を貼り、二本の細い弦を張っている。その古く素朴な音は聴く者を虜にし、穏やかで上品である。歌唱性を備えており、昆曲の演唱の風格にとても親和性ある楽器である。

・武場

昆曲の囃子方の一つで、伴奏中の各種打楽器およびこれらの楽器奏者のことを言う。音楽の雰囲気を引き立たせ、演奏のリズムをキープするという非常に重要な働きを担う。主な楽器としては単皮鼓(板鼓)、拍板、鐃鈸(にょうはち)、大鑼、小鑼などがある。

鼓板

武場楽器は単皮鼓と拍板の2種類の楽器の組み合わせからなり、囃子方を指揮する楽器である。拍板は紫檀やマホガニー、ツゲの木から作った3枚を組み合わせたものであり、囃子方の演奏の声によるメロディーのリズムをはっきりとさせるために使われる。単皮鼓は片面に蒙古牛の革を貼り、へりは厚く固い木板を合わせて作られている。胴の内部はラッパのような形状になっている。劇の伴奏中、鼓板は打楽器奏者一人の手に委ねられ、各種打楽器を叩くことと身振り手振りを補助的に使うことを通じ、文場武場の演奏を指揮しながら伴奏が進められる。

大鑼小鑼

大鑼は銅鑼(ゴング)の一種である。銅製で、丸く平べったい形状をしている。演奏時は布を巻いて作られたバチで中心や縁付近を叩いて音を出す。その音色は高く、大きく、よく響きわたり、虎の咆哮のような力強さがある。武劇や舞台の雰囲気が濃く激烈になる老生(宰相・忠臣・学者などの中年以上の役)、武生(男性荒事師)、武旦(立ち回りを首都する女優や女形)が登場する場面で多く使われる。

小鑼は面が比較的小さいことからその名がついている。演奏時は左手に銅鑼を持ち、右手には一枚の細長く薄い木片を持ち、銅鑼の中心を叩いて音を出す。はっきりと澄んだ心地よい音色を出し、音の高さが高低まちまちであるため、高音域、中音域、低音域の3つの音を使い分けることができる。劇の状況やキャラクターの必要性に応じてそれぞれ異なる高さの小鑼を選択して合わせて使う。

鐃鈸

鈸(ばつ)(シンバル)の一種。銅製で、演奏するときは両手に一枚ずつ持ち、打ち合わせて音を出す。甲高くはっきりとした音を出し、大鑼、小鑼とセットとなり、現在の昆曲の囃子方における三大打楽器となっている。その鮮明なリズムを以て、銅鑼や太鼓のどんどんという演奏を盛り上げ、舞台上の人物を際立たせる役割を持つ。

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