推しはここ:湖南省の次の人気都市

湖南省郴州(ちんしゅう)市は中国人でも読み間違えやすい都市である。この都市については、どのように説明したらいいか、いい言葉がおそらく殆どの人はすぐには浮かばないし、中国のどこにあるかもよくわからないはず。実は、この郴州、SNSではすでに話題になっている。

世間から離れ、霧に覆われる河の上で作業するお年寄り。険しい山と谷、この世にないような絶景の丹霞地形。緑が広がり、詩や画のように美しい草原と湖、これらよくネットで目にする景色は、すべて郴州から出てきているのかもしれない。これら以外にも、郴州には最も庶民的なグルメがある。その栖鳳渡魚粉は、長沙の人気レストランをも凌ぐ、湖南省本場の味である。

こんなに美しく、かつ美味しい田舎町は、もっと早く注目されるべきだろう。

最もポテンシャルのある風景

郴州は湖南省に南東部に位置し、湖南省の「南門」である。霧に覆われているこの田舎町は長沙市のようなおしゃれな都市ではないし、山水絶景で世界に名を馳せる張家界のような都市でもない。ただただ控えめで物静か、自分なりに独特なスタイルを持つと町だ。ここ数年、徐々に世間から注目され、頭角を表しつつある。

「山、湖、泉」は郴州景色の真髄であり、開発されていない景観には大自然のありのままの野生の美が潜んでいる。どこをとっても大ヒットする潜在力がある。郴州で一番人気の景色といえば、高椅岑だ。開発されていない状態の丹霞地形の処女地で、険しい山のそばに綺麗な池と川が輝き、「碧水丹霞」という独特な景観となった。

莽山にも高椅岭に劣ることのない景色がある。莽山の名前は一面に青々と草木が生い茂っている(莽莽)林の海とボア(蟒蛇)がよく出ることから付けられ、今でも6000ヘクタールの原始森林がある。山に緑が生い茂り、峰が林立し、多品種の野生動物が生息する。ここは、「原始生態一番の山」そのものである。

郴州で最も美しい湖と言ったら、東江湖の名前が上がるだろう。東江湖は山々が歩み合って合流する場所にある。毎年4月から10月まで、朝の霧が水面にかかり、漁師のお年寄りが網を広げる様子が江南情緒の溢れる絵のようだ。多くの写真好きたちは明るくなる前に、岸の近くで「霧下の小東江」の絶景を待っている。

個性と融合が共存する文化

郴州にはただ野生的な自然景色があるだけでなく、人文的な視点から個性と融合が共存する歴史・文化もある。ここは古い時代から中原と嶺南を結ぶ重要な通り道で、往来する商人がよく利用する場所である。湘粤古道上の貿易交流が盛んに行われていて、商売人が後を絶たない。ここを通った貨物船や馬車などは一日あたり千便以上もあり、青石畳に残された蹄の跡が当時の賑やかな様子を語っている。

郴州の歴史を探すなら、湘粤古道のスタート地点である「裕後街」に行くのが良い。この郴州市で最も古い街道は二千年以上の歴史を持ち、「裕後」には郴州の若者達が社会に積極的に貢献し、日々努力するように励ましの意が込められている。  

「汝城香火龍」別称「龍の舞」、郴州民間風習の一大イベントで、千三百年以上の歴史を持っている。毎年、春節から元宵節までの間、人々は竹と藁で龍の形を作り、特製の龍の線香を龍の全身に挿し、火をつけてから街に出る。その現場はとても賑やかで、舞が終わると、龍を焼き尽くし、新年のいい天候と豊作を祈る。

湖南料理の本場の味

湖南省の料理と言ったら、長沙という市名が頭に浮かぶ人が多いだろう。実は本場の湖南料理を食べたいなら、郴州は外せない。現地グルメのためだけでも、行く価値のある都市だ。赤く光るラー油の下に、豊かな味わいが秘められている。                 

「資興米粉ダチョウ」はそういった料理の中で、辛いから有名というわけではない郴州名料理で、春節などの祝祭日で食卓に欠かせない大々的な存在である。米粉に八角、桂皮など香辛料を入れ、事前に炒めたガチョウ肉と一緒に柔らかくなるまで蒸す。蓋を開けた瞬間、ヨダレを誘うような匂いが漂い、米粉とチョウ肉が最高にマッチする。一口食べると、米粉は口の中で溶け、チョウ肉は柔らかくて鮮味があり、ご飯がよく進む。

郴州人のグルメマップにもう一箇所「楽園」と言える場所がある。それは栖鳳渡である。「千里か万里、いくら遠く行っても、栖鳳渡のことを気にかける」という言葉があり、それこそ栖鳳渡魚粉のことを指す。食卓に運ばれた魚粉の上に、赤々としたラー油がかかっているが、郴州人はその辛さに困る様子を見せず、箸を取り豪快にたいらげる。だって、この赤みと辛みをなくしては、料理の魂が抜けたも同然だからだ。

魚粉以外に、栖鳳渡にもう一つ絶品料理の「焼鶏公」がある。郴州焼鶏公は食材にこだわりがある。必ず、生後一年以上の雄鶏を使い、地元の干し唐辛子と共に高い温度で炒め、調味料を入れてから鶏のスープでじっくり煮込む。出来上がった料理にはしっかりとしたコクのスープと柔らかくて歯応えのある鶏肉が大盛りに並び、友人たちと一緒に、ご飯のおかずとしてもぴったりな料理だ。

この控えめな田舎町だが、料理のように熱くて辛くて活気が溢れている。それほど有名ではないが、そんなことを気にする様子はなく、鮮やかな色とともに自分たちの歩む道を進んでいる。
 郴州は「粤港澳(広東・香港・マカオ)の後ろの花園」として、生活はテンポが緩やかでのんびりしていて、ここでの時間も他よりゆっくり流れていく気がする。このことを「ふわふわした綿飴」みたいと評価する人もいる。郴州生活の醍醐味は、分かる人なら分かってくれるはずだ。

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