たくさんの都市に行って、さまざまな風土風俗を味わってきたのに、故郷の混雑していない交通や、四季折々の美しい風景や、ゆったりとした生活リズムなどが懐かしくなる。
私の故郷の常州は、ちょうど良い面積とちょうど良い地理位置があって、静かでよいが動いてもいい、動く度に江南水郷の趣が感じられる。詩情と画意は歴史が長いが未だに古くならない。いつも街のあちこちで、舌先のすばらしさに出会うことができる。ここに長く住んで、ちょうど良い息吹があって、焦ることなく急ぐこともない、堅苦しくなくて満ちすぎることもない。
常州、江南の遺珠都市
常州を知る多くの人は、恐竜園があるからだろう。「東方ジュラシックパーク」と称される中華恐竜園では、太古の神秘にさかのぼり、恐竜の足跡をたどることができる。ここは恐竜好きの天国であり、大小の子供たちにとっては楽しい故郷でもある。7つのテーマエリア、50のエクストリームアトラクション、恐竜をテーマにする公園についての、自由奔放な想像を全て満足することができる。
常州の趣は恐竜園だけではない。人里離れた南山竹海は私の隠れ家であり、常州市の溧陽に位置している。鬱蒼とした竹が山を取り囲み、渾然たる酸素バーを作り上げている。静かな旅館、田舎のごちそう、香りが鼻をつく竹の葉の茶、浮世の喧騒を遠く離れて、一呼一吸の間に大自然の恵みを感じ取る。山間の道をのんびりと歩き回ると、ときおり川のせせらぎに出会うことができて、湖面と山並みが一直線となり、詩のようで絵のようだ。時折竹林の息吹を含んだ涼しい風が吹いてきて、煩悩や憂愁を吹き飛ばし、心まですっきりする。
城中軽食、大満足
もし車で溧陽まで行くのは大変だと心配するならば、旧市街にも騒がしいながら静かで良い場所が少なくない。紅梅公園、東坡公園、青果巷などは商業化された観光地とは言えないが、自然景観と古風な建物の中に流れる江南の趣によって、訪れる価値のある目的地となっている。散策に疲れたら、周辺へ食べ物を探しにいく。旧市街にはたくさんの美味しい軽食が隠れている。どこから来ても、甘口か辛口かに関わらず、お口に合う美食を見つけることができる。
銀糸麺は常州地方の伝統的な麺料理であり、その名は百年の歴史を持つ銀糸麺店に由来している。銀糸麺は食材に拘り、操作工程も厳格であって、麺は細い糸の如く、銀のように白く、柔らかくてツルツルしていながらしっかりしている。銀糸麺店はこのほか多種類の美食がある。小籠包、大麻餅、ワンタン、生煎包、シューマイ、豆腐スープ……日常生活の匂いは、最も普通の人々の心を慰めてくれる。道を急ぐ朝も、お腹がベコベコの昼も、疲れきた夜中も、味蕾と胃はいつでもここで満足を得られる。
常州の人々が銀糸麺に自然な愛情を持っているとすれば、甘くてもちもちのお菓子は常州の人々の心の中で切っても切れない子供時代の記憶で、熱い思いだ。1927年に創業した常州餅団店は、常州人の気難しい胃を美味しさと安さで征服した。昔ながらのカウンターには、各種のお菓子が一望できる。甘くてもちもちする条頭餅、サクサクするチバ菜団子、甘くさわやかな砂糖芋、色とりどりの小松餅……もち米好きと甘いもの好きの天国と言っても過言ではない。二十元ほどのお金で、お腹をいっぱいに満たし、壁を支えながら出てくるのも常州独特の風景とリズムである。
一つの遊興路線で、常州の快楽を楽しむ
今の私は外地で仕事をしているが、いつも週末に車で二時間半かけて杭州から常州へ帰ってくる。時間は限られているが思う味が多すぎて、知らずの内にいくつかの「独占路線」を総括してきた。毎週の帰宅はこの路線に沿って食べたり飲んだり遊んだりして、美食と美景を同時に堪能している。
私の家は新北にある。恐竜園から車で10分もかからない。普段は朝に錦繡路の胖嫂鶏卵餅に行き、それから紅梅公園を散歩する。ご飯の時間になると、本格的な本幇料理を食べたい場合は、近くにある聴松楼に行き、運が良ければ、テラスの眺望スペースに座り、公園の景色が眼下に広がり、美食と美景に合わせて、神仙みたいな生活である。
食後にぶらぶらしながら青果巷につく。運河のすぐ隣にある青果巷は、古代の果物の集散地であり、沿岸には果物の店がたくさん開けられているため、「千果巷」と呼ばれている。常州方言で「千」と「青」の発音が似ているので、呼んでいるうちに現在の青果巷となった。路地の中に多くのチャイナドレスの店、文化創意の店、茶屋と喫茶店があって、設置と陳列はとても趣があって、歩き疲れる時、適当にどれかの一軒に入って足を休め、いくらかのエネルギーを補充することは大変快適なことである。
ライトアップされた時は遊覧船に乗るにもってこいのタイミングだ。青果巷から船に乗って、運河の両側は鮮やかな対照となり、片側は軒が並ぶ高層ビルで、片側は青いれんがと黒いの大瓦、小橋流水の人家の光景である。蛇行する川の水に沿ってネオンに灯された都市を鑑賞して、天地の悠々たることを感嘆せずにいられなかった。
時間は歳月を奪うが、我々と故郷との関わりはそう簡単に切り離せるものではない。一品一品の美食は私たちと故郷との絆をつなぎとめていて、人生の幾多の寂しいひとときをも温めてくれる。これは故郷についての最も深い記憶で、最も濃い情感でもある。
寄稿者:ハルカ_Christine