中国ナンバーワンの大都市、上海。普通の人々にとってここは高層ビルが多くある街、そして現代の息吹が頬をくすぐる場所だろう。開放、創新、繁栄……多くの場合、この街はそんな言葉でタグ付けされる。しかし、もし真の上海を知ろうとするならば、この街が持つ味わい深さに気づき、騒がしい人込みや車の往来を避け、百年前の面影を残す場所へ足を運ばなければならない。
©図虫 朱小薄先森
弄堂に溢れる生活感
「弄堂(小さな路地裏)なしには上海も上海人もありえない」という言葉がある。弄堂では、のり付けされた衣服が路地を跨ぐようにして干されていて、家々からは炒め物の音が聞こえ、路地の入口では老人たちがラジオを聴きながら散髪している。この地では今日でも上海人の生活の下地を見ることができる。
©図虫 老玩童渺渺
モダンな弄堂――田子坊
この路地をゆっくりとぶらつくと、お店、化粧クリーム、懐中時計など、そのいたるところに昔を懐かしむ空気が満ちている。それはまるで人々を20世紀の上海に連れ戻してくれるようである。
©図虫 楊楊視界
まさにこれぞという弄堂――淮海坊
位置:徐匯区淮海中路
淮海坊は元の名を「霞飛坊」という。徐悲鴻、許広平、巴金、竺可楨、胡蝶など、ここは中華民国時代の歴史的著名人が生活したことがある地だ。そんなここも今では、平凡で落ち着いた市井の暮らしに包まれていて、知らず知らずのうちに過去へとタイムスリップしてしまったかのような気持ちになる。
©図虫
控えめで目立たない弄堂――藍妮弄堂
位置:徐匯区復興西路44番通り
この弄堂は一見ぱっとしない。しかし、その名は雲南省苗族の王である藍氏一族の子孫、藍妮に由来する。狭くて短い路地の中にある建物は清潔かつさっぱりとしており上品で、ヨーロッパ風のものもあれば現代風のものもある。
©图虫 1枚沙丁魚
フランス風のロマン溢れる弄堂――歩高里
位置:陝西南路287通り
ここは上海の市井の人々の日常生活の一部である。人々の生活を癒し、社会の活力を高めてくれる場所だ。ここにある生活の細々とした物事には、細部にこだわる西洋の遺風が残されている。
©図虫
異国情緒溢れる弄堂――新華別墅
位置:新華路221通り・329通り
ここには、イギリス、アメリカ、オランダ、イタリア、スペインなどの建築様式の住宅が29棟集まっている。ひとたび足を踏み入れれば、さながらヨーロッパ気分である。
すべてが揃う建物――大陸新村
位置:虹口区山陰路144通り
10メートルに満たないこの通りだが、上海の弄堂に見られる建物全般が揃っている。魯迅と許広平夫人、さらには中国の著名な文学者である茅盾もかつてここに住み、生活を送っていた。
©図虫
最も大きく新しい弄堂群――静安別墅
位置:静安区南京西路1025通り
ここは当時の上海の弄堂の通りとは違い、むき出しの赤レンガで作られたヨーロッパ風の建物が並ぶ。ここに足を踏み入れると、繁華街の喧騒や人の往来はいつの間にか遠ざかり、通りに植得られた木々の緑と静けさがそれらに取って代わる。
©図虫 MagicianDio
古い町に生きる歴史の物語
空へと高く枝を伸ばす南京の青桐とは違い、上海の青桐には優しい美しさがある。青桐の木々が地面へとまだらに落とす影を踏みながら歩いてみよう。春夏はまっすぐに伸びた木々が傘代わりになり、秋冬はかさかさと落ち葉が舞い散る。特別な味わいが感じられることだろう。
武康路――青桐揺れる百年の街
「詩作ができない人間も詩を詠みたくなり、絵を描けない人も筆を取りたくなり、歌えない人でさえ歌い出したくなる。武康路を歩くと、そんな美しい気持ちになる。」バーナード・ショーはかつてそう語った。ロマンチックでレトロなスペイン風、フランス・ルネサンス様式の建築スタイルなど、特色に溢れたこの通りには、芸術の息吹が宿っている。
武康大楼 ©図虫 下士聞道
愚園路――民国時代の上海の建築記憶
3キロに満たない愚園路だが、数十種類の建築様式が隠れている。緑鮮やかな青桐と、上海の風情にあふれた古い洋館、芸術的でユニークな小さなお店など、ここには民国時代の貴重な思い出が大切にしまわれている。
©図虫 梵之亦
淮海路――美しきシャンゼリゼ、ニューヨーク五番街
上海人はこのように言うことが多い。「余所から来た人は南京路に行くのが好きだが、上海人なら淮海路をぶらつくのが好きだ。」これは、上海人の淮海路への強いこだわりが見てとれるセリフである。
©図虫 希望の空
東平路――気高い民国の思い出
上海人はよく、高貴富貴な風采や風習を表す「貴気」という言葉でここを形容する。400メートルあまりの小さな通りに沿って並ぶのは、蒋介石のかつての愛居、宋子文の別荘など、いずれもいわれのある建築物だ。せわしさとは無縁のこの通りを歩くと、道中出会うのはゆったりと流れる時間だけである。
爱廬 ©図虫
新楽路――まるでヨーロッパの小さな町
短く小さなこの通りは美しく、見る者の心を強く惹きつけ、ぶらぶらしていると時間が逆流しているかのように思えてくる。歩き疲れた時は、近くにあるフレンチレストランに行って腰を下ろすと、まるでヨーロッパの小さな田舎町にいるような気分にさせてくれることだろう。
©図虫 Roger警長
甜愛路――上海で一番ロマンチックな通り
その名を耳にしただけで甘い気分になるこの通りには、道の左右の壁に中国や海外の愛にまつわる詩歌が28首記されており、ロマンチックな雰囲気をさらに盛り上げている。
©図虫 mau5
©図虫
上海弁に宿る街の魂
昔ながらの上海の魂と言えば、上海弁をおいて他にない。上海の国際化とは異なり、上海弁は市井の、街角の、日常生活の、色鮮やかなものである。これには、生活に欠くことができないこまごまとした言葉はあっても、体裁を繕うような言葉はない。
—「愛奇旅」より