蘇東坡が描いた宜興には、こんなにたくさんの秘蔵おもしろスポットがある

中国の文豪蘇東坡については多くの人がよく知っている。日本の文壇では、彼の詩を書き、画を描くなど、蘇東坡の影がいたるところに見られる。また、近代に至っても日本の民間では蘇東坡の誕生日に風雅な集いを開いて記念する習俗が変わらず残っている。いわゆる「寿蘇会」である。しかし、この文豪がかつて宜興と切っても切れない縁で結ばれていたことをご存じだろうか。なぜ彼は宜興にそこまでほれ込んだのだろうか。

宜興は江蘇省太湖の畔に位置する。清らかな水と柔らかな風が魅惑の茶の香りを育み、山水の霊気が美しい陶器を生み出す場所だ。宜興は国内外から中国陶器の都と称賛され、また無数の人が心を募らせる桃源郷でもある。「買田陽羨吾将老、従初只為渓山好」(官職を辞して陽羨に田を買う。まさに老いた私は、これまでただ山々と渓流を好んできたのだ)。千年前、一艘の小舟で宜興に入った大文豪蘇東坡は、この土地の山紫水明の風景に深く魅了された。宜興の山水と民俗風習はまるで紫砂壺から取り出した陽羨茶のように常にすっきりと爽やかで甘く、心にすっと入り込む。蘇東坡がこの地で田畑を買い、住居を構えたのも不思議ではない。それでは、彼が称賛した秘蔵の町――宜興を一緒に見てみよう。

渓山の小さな町:絵画に入り込んだような江南の詩意

陽羨渓山は宜興市南西部境界に位置する「マイナスイオンの町」だ。およそ900年前、蘇東坡はここで田畑を買い、隠遁生活に入った。緑の山と肩を寄せ合うこの小さな町の周囲は渓流に囲まれ、茶畑と竹林が密集している。まるで自然が生み出した秘境だ。青波たゆたう陽羨湖は山水の間に埋め込まれた真珠のようで、近くから眺めると水底が見えるほど湖水が澄みきっている。遠くに目をやり山々を眺めると、雲の海が波打ち、峰々が見えつ隠れつしている。そんななかで呼吸をしている間は、まるで詩の世界のような江南の絵巻物に身を置いているかのようだ。

町には百年のクスノキが枝に葉を生い茂らせ、歴史の重みを伝えている。復元された廊下橋を渡るとたちまち時空を越えるかのような気持ちになる。この廊下橋の名前は詩意画意に溢れていて「前縁」という。蘇東坡『楚頌帖』から取ったものだ。橋からは険しい山頂の「東坡閣」(蘇東坡を記念して建てられた)を見ることができる。てっぺんまで登れば、陽羨湖の全景、連綿と連なる山々、ぼんやりと漂う霞が織りなす美景を眺めることができる。

ここには雅達劇院、雅達書院もあり、戯曲文学を鑑賞することが可能だ。町の食堂や宜幇菜博物館では蘇幇菜の美味しさを味わうこともできる。大自然の天然「博物館」である浜湖公園では水鳥たちが群れて飛び、ゆっくり散歩するのにとても向いている。夜になると町では灯りがきらきらと輝き始める。ここで暮らすというのもまた心動かされる光景だろう。

陶二廠:陶器文化漫遊地

古い通りの傍、蠡河の畔にある、宜興の新たな国際陶器文化の座標軸は、業界外にもその名を広く知られている。かつて多くの紫砂壺の巨匠を生み出した紫砂二廠が、陶二廠の名で華麗にカムバックし、若い芸術家たちの夢追い場となっているのだ。高くそびえる煙突は、この古い工房のまだら模様の記憶を伝えている。芸術館、画廊、陶芸体験空間、市やアトリエなどが結びつき、現代のおしゃれな生活を紡ぎ出している。

独特のデザインの美術館は陶二廠の「画竜点睛の一筆」だ。日本の著名な建築の巨匠隈研吾がデザインしたここは人気必見スポットでもある。この美術館は現代陶芸、創意ある紫砂壺をテーマとした専門美術館であり、高水準の芸術展覧を長期展示を行い、陶芸フォーラムなどの活動を開催している。美術館以外にも、赤レンガと青緑色の瓦屋根、レトロな旧工房など、写真写りは十分だ。

市をぶらぶらする、それも陶二廠探索の楽しみの一つだ。蜀山陶器市には百名にも上る陶芸家がそれぞれの創意ある作品を持ち寄って売っていて、どれも愛着が湧いて手放せない一品になるだろう。さまざまな造形の紫砂壺もとても目を引く。もしあなたが紫砂壺に一家言ある「マエストロ」であったとしても、きっとここの紫砂壺の多様性に感嘆することだろう。

蜀山古南街:紫砂の発祥地

蜀山のふもとにある蜀山古南街、ここは宜興紫砂の発祥地であり、明・清時代における陶磁器の主要な外国人向け貿易地でもあった。現在の古街には明・清以来の紫砂陶芸制作が完全に保存されている。なかでももっとも多いのは陶芸のアトリエである。もし紫砂作りに興味があるなら、お金を払って体験して、自分だけの紫砂作品を作ってみよう。

静かで穏やかな古街をそぞろ歩きすれば、心がとても心地よくなる。漢服やチャイナドレスに身を包み、黒瓦を戴く古く素朴な白壁を通り抜けると、その趣は格別だ。通りに点在するカフェや茶館は沈殿した歳月の文化の香りと時間の流れの気だるさを醸し出している。

もし時間が間に合うなら、蜀山古南街からそう遠くないところにある東坡書院も一見の価値ありだ。美しく品がある江南園林式の書院に身を置けば、蘇東坡が教えを説く情景がいまでも眼前に浮かび、宜興の文化的盛栄に思わず感嘆してしまうことだろう。

寄稿者:江蘇観光(日本)ピーアールセンター

ABOUT US