宮崎駿のアニメ『千と千尋の神隠し』のなかに、海を走る列車は有名なシーンとして、印象的だった。手に取るような青い空と白い雲、果てしない水面、一本の長い線路が無限な彼方へと続く……童話の世界にしか見えないシーンかと思いきや、日本の撮影スタッフはチャカに到着した後みんな驚いた。ネットユーザーも続々とここを訪れ、「チャカ塩湖と全く同じだ」とコメントしている。
ここには童話の世界にある小さな汽車以外にも、遠い雪山、五色のタルチョーがある。湖の中心に立つと、天と地が一つになって、一瞬だけでも一生を忘れられない。生きているうちにやるべき事のリストがあれば、最も美しい年齢でチャカに出会うのは絶対に間違わない選択なのだ。
チャカの昼
チャカ塩湖に深入りすると、人によって、そして時間帯によって、異なる塩湖の景色に出会う。初めて観光地に入る場合は見渡す限り真っ白であり、足が踏んでいる塩の粒はざわざわと音を立てて、よく見ないと氷と雪に覆われた大地に来た錯覚さえ感じる。隣には巨大な塩の彫刻が天と地の間にそびえ、近くには五色のタルチョーがはためき、ぱらぱらと吹かれる風の中に、お経の言葉を聴く。
塩湖の中をずっと歩いていると、氷河の中に入ったような、白い幻の世界に入ったような気がしてくる。手を伸ばして塩湖にぶら下がる鍾乳塩を触ると、珊瑚、水晶のような質感、また満開しているひとひらの雪蓮花のようだ。
チャカ塩湖の湖心に続くレールは100年以上の歴史があり、軌間がわずか60センチで、現存する数少ない軽レールだ。鉄のさびてまだらになった線路と世の変転を経た枕木は塩湖の中で見えつ隠れつしている。長い線路の上に立つと、柔らかくて長いスカートが風に持ち上げられ、薔薇色のもの、明るい黄色のもの、真っ青のもの、どれも大変美しい。
日本のある番組は『千と千尋の神隠し』の中の名場面を再現するために、特別にチャカまで来た。本当の童話の世界が彼らは大いに見識を広げた。平静はいつも沢山の気持ちを乗せられる。静かに湖の近くに座り、塩湖は太陽に従って無限に変化する。湖は時には銀色で、時には湖のように青い、時には深緑になる……空色は水色と相まって、低い空と広い海が作り出す幻の中に、自分は一粒のほこりに凝縮し、線路のそばに、桟道の上に留まり、目の届く所、すべてが美しい。
チャカの夜
チャカで昼間の幻と典雅を経験した後、夜はあなたのロマンチックに対する全ての想像を満足できる。黄昏のチャカはまるで海辺に来たかのようでいて、夕暮れのチャカはまた精巧な油絵のようだ。
日没前に湖のほとりに立つと、太陽の光が斜めに射して、白い雪原が金色に輝く。雲影と遠山は人をうっとりさせて、まるで天国のようだ。今、風が止み、線路に腰をかけたり、桟道の欄干にもたれたりして、魂が天国の孤独な鳥になるのに任せるのだ。
夕焼け時分になると人混みが消え、湖を歩いていると、遠くからは黒いシルエットしか見えない。夜のとばりが降りると、星空が広がり、手を空に伸ばして、星を摘むことさえ可能になる。湖の中心に立つと、銀河を歩いているようで、またゴッホの絵に描かれた夜に入ったようだ。
このとき、天と地はすべて銀河になり、たまに横切る流星が、銀色の明るい線を引く。もし流星群に出会うならば、更に幸運になって、身の回りの人と一緒に、世の中の最も確実なすばらしさを味わう。
七月の流火、八月の未央
夏がチャカに行く最も美しい季節で、銀河を見るにも一番よい季節だ。晴れた日には、目の前に青空が広がり、雲が白くて絮みたいだ。遠山は向こうから来て、雲の間を通り抜け、ぼんやりしているうちに、水墨画に入ったかのような気持ちになる。
川の上の塩はただでさえきらきらしていて透き通っているのに、日の光を受けると、いっそう輝かしい。湿って暖かい塩を一握りつかんで、軽く嗅ぐと、感動が心の底から芽生える。裸足で湖に入るのも悪くない。水は温くて、細かい塩土が足の裏や足の指を圧迫して、なんとも言えない心地よさを感じる。
夏の陽射しがまぶしくて、湖面はまるでチベット高原に割れた鏡のようだ。安意如は『日月』の中で以下の句を残している。夢の中で私は再びあなたを見た。湖のほとりで、あなたのうしろ姿が、深紅色の袈裟が火のように私の目を貫いた……チャカに来れば、深紅色、余白、流火、未央を実感することができる。
チャカ塩湖は寝ても覚めても忘れられない場所だ。塩湖は広くて、奥に座ると言葉が要らなくても、天と地の間にあるお互いが確認でき、チャカと天の光の存在が分かる。今、まだ会っていないのがすでに知っていて、まだ知っていないのに既に感じていたということをやっと知った。
寄稿者:Lisa_Traveling