多くの上海人にとって、小籠包を食べることが良い一日の始まりだ。上海人が小籠包を好むことは骨にまで刻まれている。ミシュランのレストランであろうと、わずか数平方メートルの店舗であろうと、ほとんどの通りに小籠包を売る店がある。
蒸したての小籠包はふっくらしていて、薄い皮が透き通っており、中の具材がうっすら浮かび上がる。かすむ蒸気の中で、セミの羽のように薄い皮が十分に力を蓄える肉汁を包んでいる。まるで次の瞬間に皮を破って噴き出しそうだが、しっかりと中に閉じ込めている。小籠包の食べ方にはこだわりがあって、気が急くと熱い豆腐を食べられないという言葉があるように、焦っても小籠包は食べられない。小さいからといって一口食べたらダメ。よく味わえないだけでなく、スープでやけどをすることもある。
まずスプーンの上に置き、軽く噛んで、新鮮で甘みのあるスープが溢れ出す。これが正しい食べ方だ。すすることができるスープこそ小籠包の魂と言えるだろう。具材そのものの旨みが、肉と調味料の完璧な融合の化学反応で引き出されている。その後、黒酢をたっぷりつけて一口で食べてしまう。そうしたら酢の酸味が口と鼻にいっぱいになり、続いて香ばしい甘みと肉の塩味が一緒に訪れて、交響曲を演奏しているように舌が踊る。皮はモチモチとして、餡は香ばしくて噛みごたえがあり、また歯の間で追いかけるようにして、最後に喉を滑り落ちて胃の中でとろける。
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小籠包を作る過程では、すべてのステップと細かなところまでこだわる必要がある。
小籠包の餡をつくるコツが具材の組み合わせだとしたら、皮の作りはその腕前にかかっている。強力粉とぬるま湯をかき混ぜてから、力を込めて長時間生地をこねる。こねる力で生地の分子構造がさらに固くなる。丹念に生地をこねると、出来上がった皮の表面は一層張りと粘り強さを持つ。
「肉皮」は餡を作るのに欠かせない材料だ。肉皮を数時間煮込んでから取り出して、スープをボウルに入れて冷やし、煮凝りを作る。これは溢れ出すスープを作る重要なステップとなる。煮凝り、赤身と脂身が層のバラ肉でつくった肉餡、ねぎと生姜、唐辛子で煮出しただし、醤油、鶏ガラスープの素、味噌、五香粉と油、家庭にある調味料で調製した餡は、料理人の細かいこだわりを持ち、複雑で細かい手順でやっと仕上がるものだ。
次は餡つめ。左手で皮を持ち、右手で口を閉じる。引っ張って、捻って、折って、右手のおやゆびと人差し指の動きでひだを寄せる。これらのきれいに並んでいるひだが、食卓の芸術作品にもなっている。
そして10分間待つと、小籠包が出来上がる。
料理の味の変化に伴い、小籠包の餡には様々な選択が増え、一つの皮で何でも包み込むことができるようだ。一般的な豚肉餡のほか、一番人気はカニの小籠包だ。豚肉に黄金色のカニ肉を混ぜ、一口噛むとカニ油が溶け出し、香ばしさが口中に広がる。一口噛むと、豚肉の塩味と甘みも味わえて、口に残るカニ油を加えて絶妙の味わいとなる。そのほかに豚肉とクワイ、豚肉とナズナ、エビなどの上海風味の小籠包が、競争が激しい上海で人気がある。しかし、いろんな味を堪能した後に、一番懐かしく思うのはやっぱり昔ならではの豚肉小籠包だろう。
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一つの食べ物が、町中でブームを巻き起こす。
常州では、カニが追加された小籠包(加蟹小籠包)が名物となっている。「人を待つのではなく、小籠包を待つ」という習慣がある。常州の人によって小籠包は「随号」、「対鑲」、「加蟹(カニ追加)」と三つの種類に分けられる。それぞれ、カニ油追加なし、半分がカニ油追加、全部カニ油追加という三つを意味する。
無錫小籠包と上海小籠包はよく似ていて、「持ち上げて皮が破れず、ひっくり返して底が漏れず、すすると香り高く、新鮮で脂っこくない」のが特色だ。
天津で最も有名なのは「狗不理」肉まんだ。肉まんそれぞれに18のひだがついている。西太后は、山中を走る獣も、陸地の牛羊も、海底の海鮮も、狗不理の美味しさには及ばないと絶賛した。
上海の小籠包といえば、「南翔小籠包」が一番有名だ。たとえ郊外に位置しても、これを味わうために、毎日遠くからやってくる人がいる。今日、南翔小籠包は水墨画シリーズを提供し始めている。皮に果物や野菜の天然色素を活かして、カラフルな小籠包を提供している。
江南の水郷は自然に恵まれ、その小籠包にも魂が宿っているはずだ。歴史が進み、世界が変わっても、小籠包がもたらした江南の郷愁だけはこの先もずっと姿を変えないだろう。
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—「三連グルメ」より