中国、青島(チンタオ)では袋でビールを飲む? 青島人とビールを巡る歴史の旅

【読城記録工作室】より転載

中国では、青島こそ最もビールを理解している都市だろう。ビニール袋に入ったビールを持って、飲み歩く姿は、青島という街ではよく見かける光景である。海水浴場で同じ色に染まった海と空に魅了されたり、海鮮市場でビールを飲みながら暮らしの味を堪能したりと、海の泡も、ビールの泡も、どちらも人々を幸せな気持ちにさせてくれる。

海鮮料理とビールは青島人の日常 写真出典 :視覚中国

熱血ビール

中国でスポーツが日に日に盛んに取り組まれ、発展することは、ビールの普及と販路拡大の促進に影響している。1986年、韓国で開催されたソウルアジア競技大会で、中国体操界の王子様と呼ばれた李寧選手が金メダルを四つも獲得したが、その際テレビの前で観戦していた中国の視聴者は大いに励まされ、「よくやった!」と祝杯を挙げ、ビールをたくさん飲んだという

青島の景色   写真出典:500px

それは、ビール産業の発展がスポーツから力を借りたことの始まりだと言える。翌年、中国のビール産業は爆発的な発展を迎え、わずか一年で二千社近いビール企業が設立されて、ビールの生産高も年間20%から30%の割合で増加するようになった。オリンピックやワールドカップなど世界スポーツ競技大会のスポンサーになるため、ビール企業は「我先に!」と競い合っていた。このような背景のもとで、青島は自然とスポーツ産業での地位を固め、2008年の北京五輪のセーリング競技はこの都市で行われることになった。

青島の景色   写真出典:LOFTER

消費レベルのアップや個性を求めるニーズがますます強まる状況の中、青島ビールも種類の増加やハイエンド商品の開発の道に進むことを試し始めた。百年の歴史を持つ青島ビールの工場には秘密の倉がある。その中には北米から運ばれてきたオーク樽が大量に置かれ、一樽当たり約220リットルのビールが貯蔵されており、それは、青島ビールの最上級ビール市場への打診でもあった。

ビールの都

青島が「ビールの都」と呼ばれるには理由がある。1903年、ドイツ人とイギリスの商人は合同で青島の北隅にビール工場を設立した。最初の商品ラベルは灯台の絵だったが、今は青島有名な観光スポットーー桟橋の先端にある「回瀾閣」へと変更された。

ビール博物館 写真出典:LOFTER

当初、この工場でできたビールの販売先は、青島在住の外国人だった。車がない時代であるため、ビールの搬送はオーク樽のままで運ばれていた。今の青島ビールの最上級商品に何か経緯があるかといえば、創業時の馬車やオーク樽に敬意を払っているのかもしれない。

新中国成立後、ビール工場はついに青島人のもとにへ戻り、改革開放の時代において、青島ビールの輸出は中国の外貨準備金を作る手段の一つでもあった。

ビール博物館 写真出典:LOFTER

今の青島ビール工場はすでに売店付きの工場と博物館に変貌し、青島人が良く利用するビニール袋のビールの多くがここで売られている。青島人が恵まれていると羨ましがられるのは、このバラ売りのビールがそれほど豪華なものというわけではなく、除菌と濾過をしないこのビールの賞味期限がただ24時間と短いが,口当たりが豊かで美味しいことにある。

実は、元々このビールは青島人のために作られたものだった。市民のニーズに応じ、容器が魔法瓶の他に洗面用ボール、茶壺などもあり、工業と製造業が成長する時代に入ってから、今のビニール袋が普及されるようになった。

青島ビール 時代週報記者 黎広撮影

この庶民的な飲み方こそ、青島人と青島ビールとの絆を作り、「血液にまでビールが混ざっている」と半分冗談で話す青島人もいる。これは青島が2021年の「中国のビールの都」に選ばれた由縁だろう。

超·高級的

オーク樽で熟成されたビールには多くのフェノールと炭化水素が含まれ、こういった成分の一部はオーク樽由来で、一部は樽内の特殊な成分とビール自身の成分が結合して出来たものだと思われる。

ビール博物館 写真出典:LOFTER

より良い原材料と醸造技術のおかげで、ここで醸造される超高級ビールは原麦汁濃度が約24度、アルコール度数が10%を超える。それに加え、オーク樽がビールに独特な風味を加え、見た目も特別であるため、ビール従来の3年の賞味期限を超えることに成功した。

オーク樽  時代週報記者 黎広撮影

青島ビールから打ち出された超高級ビールシリーズは製品の質と珍しさに力を入れるだけでなく、消費者のニーズに耳を傾け、「現状打破」というイノベーション意識を持ち、より多く、より繊細な消費体験を提供することにより、伝統と現代の両方を極めている。

青島の霞、海天を照らす  写真出典:視覚中国

 ビールは青島という都市の如き、古めかしい百年以上の歴史を持つ建物を背景に、青い樹と赤い瓦が依然として青島の底色であり、海辺に立ち並ぶ高層ビルは青島の現代化の象徴である。青島の変遷を見守ってきたのは、やはりこの都市に流れているビールだ

—「黎広」より


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