秋、10月のチベット拉薩(ラサ)、素朴な風家いと素朴なグルメを味わう旅

10月の拉薩は観光シーズンの終盤で、静寂さの中に暖かさが残り、日差しが城の上から降り注いで、一面を黄金色に染める。まだ緑が青々と生い茂っているが、少しばかり秋の寂しい色も混ざっている。旅館の近くに、赤い鉄製のドアの茶館があり、甘茶が一壺で5元、芳しくてコクがある味だ。もしちょうど向こうか隣におじいさんが居合わせるなら、きっと微笑んでここをすっと見ていて、太陽のように温かい気持ちになるだろう。

拉薩散策の一日は、色拉寺(セラ寺)から始まり、幼い時の生活のように、ここは静かで、素朴な場所である。太陽の光の下、寺のメイン通路のそばにあちこち子犬が寝ている。その姿が木の影と重なり、永遠に邪魔されずに過ごせる雰囲気を醸し出している。空は紺碧の青で、どこで撮っても、いい景色が映る。

-色拉寺-

運のいいことに今日はチベット大学の「曲達」という響きのいい名前のチベット族のお兄ちゃんにガイドをしてもらえた。彼のお陰で、色拉寺を始め、チベットの神秘的な話をたくさん聞くことができた。観光客で賑やかな大昭寺(ジョカン寺)と違い、色拉寺の観光客は多くないため、ここにある康村(経文を勉強するグループ)をじっくりと味わうことができる。色拉寺を訪れる観光客は大体チベット文化に憧れて来たので、こここそ、ラマ教(チベット仏教)の人的・文化的景観を堪能する最適の場所だろう。

-色拉寺康村-

チベット語の「色拉」は野薔薇のことである。宗喀巴大師の弟子はここに寺を建てるとき、山一面に野薔薇が咲いていることから、「色拉寺」という名前をつけたと言われている。色拉寺は見た目が贅沢に飾られていないものの、実は、寺の中には貴重な宝物が大量に保管され、金鋼仏像一万個以上、内陸かインドからもってきた銅の仏像もある。殿内の壁に描かれた色とりどりの壁画はすこし色褪せてたり、剥がれたりしていても、その精巧さと美しさを隠すことはできない。最も重宝とされているのは金汁(液体状態にした金)で書いた経書『丹珠尓』である。

曲達の話では、寺の所蔵物の中で最も有名な像は大殿にある「馬頭明王像」だそうだ。ここを訪れた人は自分の頭を仏壇の中に入れ、像の基盤に触れることで、馬頭明王のご加護を頂くことができ、神に敬意をはらうとともに、幸せと喜びが自分に降りかかることを祈るのである。また、鼻先に「酥油灯」(バター灯明)の煤を付けることで、睡眠の質があがるというご利益があるとされている。

玲児さんに色拉寺の弁経の雰囲気を必ず体験することを勧められた。その他の寺にも弁経があるのが、詳しい日程について部外者が知る由もないに対し、色拉寺の弁経はいつも午後三時に行い、定番になったそうだ。参加している僧侶数十人の中にはお年寄りもいれば、若者もいる。みんな弁舌を振るい、手を叩いたり、足を踏んだりし、豊かな表現力を見せ、見る価値がある。

-色拉寺弁経-

お昼は色拉寺の小さな飲食店で曲達に勧められたチベット麺を注文した。現地の味に慣れないかと心配したが、食べてみたら、麺にコシがあり、スープも美味しく、どんどん箸が進んでしまった。曲達は一緒に食事することを最初遠慮したが、こちらの再三の誘いに負け、大人しく麺を啜る姿を見て、可愛い学生だなと思った。素直に振舞っている曲達が好きで、高原で育った人にしかない単純さに惹かれた。私のことを「お姉さん」と呼んでと言ったら、とても喜んでいた。方向音痴で迷子になりやすいこの頼りのない私をしっかり案内してね。


-チベット面-

ヨーグルト店は玲児のお勧めで、人参果(ペピーノ)ご飯は曲達のお勧めだ。両方とも味わってみて、いい体験ができた。こちらのヨーグルトは内モンゴルの「烏日莫」と違って、見た目が「豆花(トウファ)」に近いが、もっと滑らかだ。薔薇ジャムを加えることで、ロマンチックさを感じさせる軽食である。人参果ご飯は初めて食べたが、薄めの味付けで、口当たりが柔らかくてもちもちだ。やはり曲達のお勧めに間違いない。

-人参果ご飯- 

玲児からもう一つお勧めがあった。卓瑪婆さんのチベット料理レストランは路地の奥にあり、赤いドアのチベット料理を提供する店である。注文を終えたら、まず店主に本物のチベット民家の見物に誘われ、哈達(ハダ)まで送られ、彼の温かさに好感度が倍増した。レストランの二階には造花が一杯に飾られ、綺麗な場所だった。階段の三つの壁に掛かった写真は人たちがこの店との関係性を語っているようだ。庭園に飾ってある牦牛(ヤク)とチベタン・マスチフ(チベット原産の大型犬)の置物も環境に馴染んでおり、主人の行き届いた心遣いに感心した。皆さんもし行ってみたい場合は、事前に予約を。

-卓瑪のチベット料理-

チベットの人々は今ではなく、次の世に生きることだけを求めている。確かに明日を生きるのは一つの生き方だが、私にとっては、この世界で成功できる方法はただ一つ、それは好きな生き方で人生を送ることだ。

—「茶白の少女」より


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