福建、中国を代表する、白茶、紅茶、ウーロン茶、ジャスミン茶の発祥の地を巡る茶の歴史と文化の旅

中国六大茶類の歴史を遡ると、その中のウーロン茶、紅茶、白茶、ジャスミン茶の発祥地は全て福建である。

遠い日本でも、福建茶は飲料メーカーに「儲かる秘訣」とされている。皆先を争って、包装に「福建省推奨」と明記し、自分こそ本場だと強調している。福建のジャスミン茶も海外でかなり人気が高く、福州は国際茶委員会に「世界ジャスミン茶発祥の地」の称号を授与されている。福建省のあちこちに美味しいお茶の産地があり、福建の大地には、お茶の伝説が今も伝わっている。

中国の六大茶類、その半分が福建で生まれた

洪水に見舞われても、福建人のお茶への情熱は冷めない

撮影/陳健


福建茶は世界にどんな影響を与えたか?

福建は海と山に面している。ここには茶の木が育つのに適した礫質土がある。そのうえ、遺伝資源も極めて豊富である。また閩江・九龍江・晋江水系が大陸と海洋とを接続する重要な通路となり、福建のお茶も古くからそれらを通して遠い海外へ広まっていった。

販路が拡大するにつれて、福建茶の影響力も日々高まっている。西側諸国の茶の呼び名も福建方言と直接的な繋がりがある。

福建南部地区で、お茶を「te」、お茶を飲むことを「tsia te」という。オランダ人が福建茶を持ち帰った後、この発音に基づいてお茶を「Thee」に訳したそうだ。英語の「Tea」や、フランス語の「Thé」や、ドイツ語の「Tee」は、皆「te」の変化である。

昔ヨーロッパへの輸出量が一番多い福建茶は、正山小種だった

図/視覚中国

白茶の故郷、紅茶の元祖、ウーロン茶の発祥地

福建茶はどれほどすごいのか?

ウーロン茶

福建のウーロン茶は安渓鉄観音と武夷岩茶が代表的で、前者の多くは清らかで余韻の長い花の香りがして、独特な「観音韻(鉄観音特有の味と香り)」がある。後者は香りが濃いものもあれば、清らかなものもあり、花の香りや果物の香りがするものもある。更に、山中の茶畑で育てられたお茶特有の「岩韻(武夷山の岩の養分が醸し出す味と香り)」もある。

武夷岩茶、安渓鉄観音

図/遊力克、視覚中国

それに、福建ウーロン茶の品種は数百種類もある。肉桂、水仙、水金亀、大紅袍、鉄羅漢、白鶏冠…「様々な花が美しさを競い」、その数は数えきれない。鉄観音、毛蟹、本山、梅占、黄金桂…味はそれぞれに異なり、それぞれに魅力がある。

白茶

福建白茶の中で福鼎産と政和産が最も名が高い。清末から現在にかけて、この二つの町はずっと中国の白茶輸出の重要基地である。

福鼎は海に臨み、日照条件が非常に良い。萎凋は主に陽光で茶葉を干すから、福鼎白茶は独特な「日の光」の香りがして、喉越しが純粋でまろやか。

政和は山を背にし、昼夜の温度差が大きい。加えて雨季と茶の収穫時期は重なるため、萎凋は室外と室内の両方で行われる。よって、花の香りが高く、喉越しがさっぱりしている。

福鼎白茶と政和白茶のどちらがいいか。結論はまだ、出ていない。それは、福建人が、自分の口に合うものが一番だと分かっているからだ。

福鼎と政和の白茶はそれぞれに異なる特徴がある

撮影/陳健

白毫銀針は白茶の中の「上玉」、枝先についた新芽だけを集めて作られる

図/視覚中国

紅茶

紅茶は昔、世界で消費量の最も多いお茶だった。そして紅茶の元祖は、福建武夷山の武夷紅茶であって、その中で一番有名なのは正山小種である。生産する時に、地元特有の松の枝を燃やして茶葉を乾かすから、仕上げ品は松煙の香りと干し竜眼の香りがして、独特な風味がする。正山小種は17世紀に既に欧州に伝わり、イギリスの宮廷に献上された。それから、徐々に欧州諸国に広まり、最終的に世界を席巻するようになった。

武夷紅茶が世に出た後、徐々に小種紅茶と工夫紅茶、紅砕茶の三種類に分けられた。工夫紅茶の中の祁門紅茶・滇紅(雲南紅茶)・四川紅茶・寧紅工夫茶・英紅・信陽紅茶そして福建地元の坦洋、白琳、政和の三大工夫紅茶は、皆武夷山の正山小種と何らかのつながりがある。

独特な干し竜眼の香りは、正山小種の特徴

図/視覚中国

生産中の正山小種

図/図虫・創意

ジャスミン茶

「伝統福州味、清雅氷糖甜(伝統的な福州の味、清雅な氷砂糖の甘み)」と言われる福州のジャスミン茶は、水分を減らした緑茶をベースにして加工される。茶とジャスミン花の香りが融合し、新鮮で長く続く香りを醸し出す。味は芳醇で爽やかである。よって、ジャスミン茶は「窨得茉莉無上味、列作人間第一香(ジャスミンの無上の味を味わい、世界一番の香りと称する)」と謳われている。

しかし、都市が大きくなるにつれて、花畑がどんどん少なくなった。そのため、「福州花、閩東茶」で窨製する(花を層にして茶の上に置き、その後かき混ぜて香りを均一に茶に移すこと)伝統的なジャスミン茶は日に日に珍しくなっていった。幸いに、福建人が作り方について、揺るがずに伝統を守っているおかげで、この貴重なお茶は今も異彩を放っていて、我々も「氷砂糖の甘み」を楽しむことができる。

ジャスミン茶は「窨得茉莉無上味、列作人間第一香」と謳われる 撮影/黄小璇

「伝統福州味、清雅氷糖甜」は福州人の記憶に刻まれた味 図/山林食紀

地域文化と闘茶文化

お茶の販売は既に福建文化の一部として盛り上がっているが、福建人は茶器、水質、お茶の種類から淹れ方までお茶に関するあらゆる部分に対して、絶対にお粗末にしない。閩南工夫茶、閩西擂茶等等…客をもてなす時に、美味しいお茶を入れるのは、最も主人の歓迎の意を現すことのできるエチケットである。茶器は徳化白磁、建陽建盞を使うことが多い。これらは皆、悠久の歴史を持つ福建の名物である。

福建人、茶無しじゃ気が済まぬ

撮影/方托馬斯

南平市建陽産の建盞、悠久の歴史がある

撮影/林傑

また、福建人は闘茶も好きだ。宋代、闘茶は朝廷と民間で流行っていて、建州(今の福建建瓯市)北苑御焙は全国的に有名な貢茶都市となった。そして、貢茶を捧げる前に、地元ではまず闘茶を行って、選ばれた質の最も良いお茶を皇帝に献上するようにしていた

宋代の闘茶風習、福建は最も盛んだった 図/視覚中国

唐・宋代に盛んになっていた「闘茶」風習は今も福建各地で見られる。ただし、規模がもっと大きくなり、プロのレベルになっている。例えば武夷山天心村闘茶大会、海峡両岸民間闘茶大会、海峡両岸茶王リング大会、安渓鉄観音大師合戦等、各地で行われる民間の闘茶大会において、出されたお茶は皆優れた絶品である。

武夷山天心村闘茶大会、観客が審判 図/視覚中国

これらの闘茶大会があるからこそ、福建茶は絶えずに革新・進歩し続けることができた。

福建のお茶から、福建人の血液の中に溶け込んだ精神が伝わる。彼らには勇気あり、行動力あり、革新の決意もある。海の広がる所に必ず媽祖の像が聳え立つ。レストランのある所に必ず沙県小吃の店が開かれる。町のあるところに、必ず寧徳の電池がある。道の通じるところに、必ず晋江産の靴が履かれている。そして、中国人のいるところに、必ず福建のお茶がある。

福建茶は福建人を養うだけでなく、もっと遠くへも行けた 図/視覚中国

福建、中国茶の一大産地という名に恥じない!

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