無形文化財を伝承し、最高水準をつくる

春節には、中国伝統文化のエッセンスが込められている。私たちは張雪、趙偉斌、張金春の3人の無形文化財伝承人の足どりに従って、中華伝統に入り、一年ぶりの新春の中で権威に敬意を表しながら国粋を伝承する。

01蘇州刺繍の伝承人、薛金娣親子

蘇州刺繡は中国の四大有名な刺繡の長として、江南の大人しげな美しさを載せているだけでなく、世界に「針の先のバレエ」をも演じている。蘇繡の主な発祥地ーー鎮湖は、最盛期には「八千人の刺繡娘、四百の繍荘」で天下に名を馳せていた。

張雪は鎮湖の刺繡名門に生まれた。彼の母、薛金娣は当地でトップクラスの刺繡師で、かつて中国の工芸を世界に伝え、ルーブル美術館で刺繡を展示した最初の中国の職人でもある。母の影響を受け、張雪は小さい頃から独学で糸を整理したり通したりしていて、いくつかの刺繡の方法もある程度身に付いた。

大学を卒業した後、張雪は久しぶりに故郷に帰ってみると、町に刺繡を携わる職人が段々減っていることに気づき、聞いてみると三十歳以下の刺繡娘は四十人にも満たないという。そこで、蘇繡が衰廃していく様子を見るに忍びない、この85年生まれの若い男は、世俗的な偏見を顧みず、思い切って外国で研究する機会を手放し、母親の手からあの伝承を代表する刺繡の針を受け取った。

「女性に伝授するが男性に伝授しない」とは刺繡の千年以来の伝統だ。耳元で絶えず疑問の声が聞こえてくるにも関わらず、張雪は独学した基礎とたゆまぬ努力によって、飛ぶような速さで蘇繡の40数種の針法を身に付け、さらに自分の独特な美意識を結合し、針法に少しずつ新鮮な魂を注入して、多くの人々を驚かされる刺繡作品を作り出した。

器用な手を通して、張雪は伝統的な刺繡と現代芸術を結び合わせ、構図と色つやにおいての限界を突破した。「星空」という代表作は人々の期待に応えて、江蘇省第十回芸術博覧会賞金賞を獲得した。この伝統を家々に浸透させるために、彼は蘇繡を日常生活の領域に応用し、さらにモバイルゲーム業界にまで広く知れ渡った。

張雪にとって、各時代にはそれぞれ独特の息吹と伝承方式があり、一針一針が古今を貫かせ、一線一線を生活に溶け込ませることこそ、伝統に新しい生命を吹き出すことができるのだ。

02国家級獅子舞大家、嶺南獅王趙偉斌

毎年の佳節、必ず獅子舞で興を添えるのは嶺南の人の伝統の習わしだ。広東で伝わった獅子舞は南獅に属して、中国の獅子舞の中の一種で、明時代に仏山の南海に始まったと伝えられている。

獅子舞を披露する名門に生まれた趙偉斌は、「趙家獅」の五代目の嫡流の弟子で、彼の父は故広東省獅子舞の代表的な伝承者——「南獅王」趙継紅だ。父の影響を受けて、趙偉斌は子供の頃から獅子舞に深い興味を持ち、6歳から父に習い始め、今になってすでに40年を超えている。

趙偉斌にとって、獅子舞は万事めでたく順調であり、勇敢で力強い象徴であり、まさに彼のこの26年以来時代をリードしてきた探索と粘り強さが、獅子舞協会を世界中に名を馳せた獅子舞サークルの一つに発展させ、南国獅子舞のブランドもますます大きく響くようになった。

03中国十大名シェフ、北派満漢全席大家張金春

中華料理と言えば、清朝の宮廷料理として有名だった満漢全席が思い出されるだろう。満族と漢族の不和を解くためのこの大饗宴には、108種類の料理があり、山と海の恵み、思い付くもの何でも含まれている。

しかし、多くの食材が消えていくにつれ、北派満漢全席の味は、歴史の中にだんだん沈んでいく。清朝宮廷御厨の四代目である張金春は、この無形文化を伝承する難しさをよく知っている。「満漢全席が最後になって文字だけの記憶になれば、先生方の何代かの精魂が、我々の所で止まってしまいます。」

料理人の家系に生まれた張金春は、幼い頃から両親の影響を受けて料理を好きになり、29歳で国宝クラスの大家たる盛英傑に弟子入りした。師匠の指導の下で、張金春の料理の腕は急速に成長し、同時に業界内で有名になった。最後に、98歳の師匠から北派満漢全席の孤本を受け取り、本格的な中華料理伝承の旅が始まった。

2016年から、張金春は彼のチームを率いて、満漢全席北派料理の標準化作業を推進し、二年間をかけて、ようやく国家、省レベルの標準化研究機関から認定され、黒竜江省科学技術庁から科学技術成果証明書を授与され、彼本人も「全国最高御膳大家」の称号を獲得した。

張金春にとって、革新は権威をよりよく伝承するためで、満漢全席北派料理の標準を形成することで、この無形文化財を普通の家庭に入れさせ、継続させ、そして百世まで残させることが可能になるのだ。

我々はよりよい未来に向かって歩み始めている。だからこそ、今までの優れた伝統文化を継承していくことに意義があるのだ。

寄稿者:度々旅

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