重慶、後ろ髪を引く市井の人間模様

炎のように熱いそこは、しかし小さな茶屋の一つ一つに気持ちよさと心地よさを隠している。

そこの魔法にかかったような8次元の交通は、ナビすら恐れさせ、ちょっと気を抜いただけで運転は重慶一日巡回ツアーになってしまう。

そこの夜景は人たらしだが、その明かりの一つ一つには無尽の優しさが秘められている。

そこのグルメは誘惑的で、いつも忘れがたい味わいをあなたに残し、ひいてはその味を再び味わうためにあなたはふたたび重慶の地を踏むことすらある。

そこは重慶、複製不可能な町である。

01 中国一のネット上の人気都市

朝天門広場

ここは重慶の古い城門の一つであり、水路客運における最大の埠頭であり、2つの大河が交わるところでもある。陝西省鳳県から約1000キロを脈々と流れてきた嘉陵江がここで雄大な長江へと流れ込み、片方は黒くもう片方は黄色い重慶版の「涇渭分明」(涇河と渭河という2本の河の間にはっきりと一線が隠されている)を演じている。

洪崖洞

四川や重慶の伝統的かつ特色ある建築である吊足楼が山に依って立っている。ここに身を置くと、『千と千尋の神隠し』のファンタジー世界に迷い込んだかのような気分になる。

02 8次元の魔法の交通

李子垻

モノレールは重慶にしかないわけではないが、しかしどこに建物の中を走るモノレールがあるだろうか。重慶軽軌2号線の李子垻駅は重慶で唯一のビルの中に作られた駅である。19回建ての建物の6階から8階部分を駅が占めている。ここに来れば、列車に乗ってビルの中を通り過ぎる不思議な体験ができる。

長江索道

長江索道は中国全国で唯一の長江の上に架かったロープウェイだ。巨大な鉄の箱のような形をしていて、まるで河を渡る空中バスのようであり、満員の乗客を乗せて長江の両岸を行き来している。足元には長江の水の流れが横たわっており、その上をロープウェイがゆっくりと過ぎると、目に収まるのはほかでは見られない独特な光景だ。

皇冠大扶梯

皇冠大扶梯は全長112メートル、高さ52.5メートル、幅1.3メートル、傾斜度30度のエスカレーターである。これは中国最長であり、アジア第二の長さを誇る。たくさんのエスカレーターに乗ったことがあるだろうが、麓から山頂までの2分30秒のエスカレーターの旅はきっと体験したことがないはずだ。

03 昔ながらの重慶

磁器口古鎮

磁器口古鎮を訪れたなら、青石板の石畳を踏み歩きながら、重慶の本場の食べ物を口にしてみたり、茶館に座ってみたりして、重慶の風土や人情を感じてみよう。あまり賑やかなのが苦手な人は小さな路地に入ってみよう。人の流れがあまり多くないし、なにより現地の人々が心地よさげに玄関の前に座っている。本物の重慶生活はこのような路地に隠れているのだ。

山城第三歩道

山城第三歩道は重慶で一番の特色である「でこぼこ」そのものである。ここは重慶で唯一の崖に架かった都市桟道であり、向かいには長江が蕩蕩と流れている。高い所に登って眺めると、都市と河とが一緒になって美しい山の街の景色を作り出している。

泡茶館

人々はみなこう口にする。「パリの風情を味わうならコーヒー館に行け、重慶の風情なら茶館だ」。嘉陵江の水で淹れた磁器口のお茶を味わうのは、重慶人の楽しみの一つだ。茶を一杯淹れ、『重慶商報』を開き、記事を読みながらおしゃべりする。空が暗くならないうちは人々も活動をやめることはないのだ。

04 ロマンティックな夜景

南山一棵樹

南山一棵樹は山城重慶の夜景を遠くから見るのに打ってつけの場所の一つだ。山の街という地理的原因により、建造物の間の大きさや高さのまちまちさが大変興味深く、折り重なる立体感は文句のつけようがない。遠くから見る明かりの一つ一つには、どれも生活の気配が満ちている。

磁器口古鎮

磁器口に夜来れば、そこは昼とは明らかに違う姿を見せている。暖かな光が小さな道の一本一本を薄暗く照らし、歩けば歩くほど重慶人の生活の中へと深く入っていく。階段の上に座って行き交う人々を眺めると、この世の美しさとはこういうものに過ぎないのだなと思い至ることだろう。

05 火のような辛さ、身にしみる甘さ

重慶火鍋

重慶は火鍋の街である。重慶人にとって火鍋はなくてはならないものだ。ピリリと辛いスープにさっとくぐらせた、牛肉、羊肉、牛の胃袋や野菜……汗びっしょりになりながら辛くも美味しい味わいを体験すれば、十分な満足感のほかは何も感じないはずだ。

重慶小麺

朝早く起きて、レストランを適当に探していたら、道端の背の低い椅子に腰掛け、テーブルに顔をうずめるようにして夢中でずるずると何やらすすっている一群の人だかりに気づくだろう。豌豆雑醤(エンドウ豆入りの肉味噌)、牛肉、肥腸(豚の大腸)など、麺の上に乗せる具の各種に赤いラー油を合わせたもの、それが朝食のセンターマイクを握る重慶小麺である。

紅糖氷粉

「辛い」。それが人々の重慶に対する第一印象である。しかし思いもしないことに、重慶は「甘い」街でもある。たとえば紅糖氷粉は辛さの包囲網を突破して、人々から深く愛されている。夏の一碗はその冷たさで暑さを吹き飛ばし、身にも心にも沁みる一品だ。

紅糖糍粑

米から作った糍粑は、同じく米から作ったもち菓子である「年糕」よりもさらに歯ごたえが強い。これを揚げると中はもっちり、外皮はカリカリとしていて香ばしい。そこに黒砂糖の汁をかけたものは、火鍋を食べる間にちょこっと口にすると、その甘さと言ったらこの上ないほどだ。

入れ替わっていく新旧のなかで変わらないのは昔ながらの重慶人が持つのんびりさである。早朝の一杯の重慶小麺、夜に家族そろって食べる火鍋、マージャンをしながら、楽しくよもや話をする。重慶に行けば、ここは天国ではないが、しかし市井の人間味に溢れ、名残惜しさを感じさせる風景に満ちた場所だと気づくことだろう。

—「籬館」より

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