水たゆたう溱湖をゆっくり巡り、ゆったりと美しい春光を味わおう

江蘇省中部、長江と淮河の間に位置する溱湖。その霊気は水によって高められ、この湖の魂となっている。そんな溱湖湿地の全景はひとひらの小舟で見ることができる。ここでは古今折り重なってきた輝かしい人文が泰州に沈殿し、熱く深い幸福の源となっている。今回は泰州を訪れ、独特の水郷の風情を味わい、スローライフならではの魅力を満喫しよう。

溱湖国家湿地公園

広々として果てがない溱湖湿地の起源は8000年前の海進にある。やがて引いていった潮、それが泰州に豊かな贈り物を残していったのだ。溱湖湿地にはガマ草が生い茂り、川の枝が交差しており、多くの希少動物にとって理想的な生息地となっている。春、天然の酸素バーである溱湖の緑林をゆったりと歩くと、草木が新たに芽吹き、あたりは緑に満ちている。陽光、微風、花の香りが溶け合って一体となり、体中のすべての細胞が大自然の新鮮な息吹を感知する。長く伸びる木の桟道をゆっくりと行くと、アシの茂みのなかで歌う水鳥の声が聞こえ、悠然と水を飲んで去っていくシフゾウの姿が見える。そこでは万物に春の生命力がみなぎっているのだ。

溱湖の全貌を知りたいなら、後ろについた櫓で進む揺櫓船(ヤオルゥチュアン)に乗るのがいちばんだ。一艘の小舟に乗って広大な湖水を漂うと、ぼうぼうと茂る水草、カエルや虫の声、鏡のように穏やかなエメラルドグリーンの水面に波紋が幾重にも広がり、カモも思わず旅のお供を勤めてくれる。水路の両側には溱洧関、儲巏広場、鵲仙島、潼里新街などの代表的な観光地があり、水郷の漁家の女が歌う独特のメロディを聞きながら美しい湿地の風景を目に収めると、まるで『オズの魔法使い』の世界に入り込んだようだ。

ほかにも溱湖国家湿地公園ではタンチョウヅル、コクチョウ、ヨウスコウワニなどの国の保護動物、沈水性、浮水性、浮葉性、湿地抽水植物などさまざまな種類の水生植物を見ることもできる。これら天然の緑が編み出した住処は野趣限りなく、訪れる者は思わずその癒しの生態物語に浸ってしまうのだ。

溱潼古鎮

限りない風景が広がる溱湖に隣接し、四面を水に囲まれたこの千年の古鎮は、物産に恵まれた水郷の真珠だ。6万平方メートルに渡って広がる青レンガに灰瓦の明清古建築に暖かな春風が吹くと、古鎮は素朴で優しい息吹で満たされていく。ここの住宅は緻密さに長けている。奥深く続く横丁やひっそりとした住居、花崗岩の一種「麻石」が敷かれた石畳の街道、古井戸のある庭先、曲がりくねった路地は狭く、人しか通れない。多くの家がつながっており、ここをそぞろ歩くと、はるか遠い歴史の時空を行くかのように感じられる。

麻石街は溱潼古鎮のシンボルであり、何世代にもわたって受け継がれてきた思い出があり、数多くの店が軒を連ね、様々な特産品があり、往来する人々で賑わい、溱潼の風習が満ちている。麻石街に沿って古屋敷別邸を訪ねてみよう。「院士旧居」に入ると、そこでは時間が沈殿している。人目を引く家訓からは家や国を思う心が伝わってきて、厳粛さと尊敬の念が湧いてくる。

春の溱潼古鎮で最も印象深いのは千年近い樹齢の宋代の山茶(ツバキ)の古木だ。山茶院では十数メートルあまりのツバキの木が古井戸を覆っている。花を豊満に咲かせるその姿は荘厳であり上品である。毎年3月4月の最盛期になると、何万という花が雲が空を覆うように怒涛のように(删)咲き乱れ、その艶やかな姿は見る者をうっとりさせ、その香りは春を通してあたりを満たし続けるのだ。

溱潼会船節

溱潼について語る人はきっと、この特別なお祭りを口にするだろう。その名は溱潼会船節。南宋の時代から今に伝わるこの民俗行事は、千年近い歴史を持ち、「世界最大の水上縁日」とさえ称されている。毎年清明の時節になると、溱湖の湖面は非常ににぎやかで、数百もの多種多様な会船(祭りに使われる船の総称)と万近い漕ぎ手が青波たゆたう溱湖湖面に集まり、先を競って一斉に船を漕ぎ、ただひたすらに前へと進むのだ。その様子はただただ圧巻である。

溱潼会船節の歴史的起源については様々な説がある。史料の記載によると、南宋時代、名将岳飛と義民張荣、賈虎曾が溱湖にて金の軍団を何度も大敗させたという。この激戦で亡くなった南宋の将兵たちを供養するために、現地の庶民たちは清明の時期に船を出して追悼活動を行った。それが長く続き、会船という風俗習慣が形成されたという。800年あまりの会船文化は多くの人々の心を牽引し、代々受け継がれてきた。現在ではその意義は会船そのものをすでに越え、貴重な歴史文化財産、民間文化を見ることができる最高の舞台になっている。溱潼会船節は溱潼の人々の独特の人文風景を伝えているのだ。

寄稿者:江蘇観光(日本)ピーアールセンター

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