江蘇省南通市は、中国で「近代一の城」と称され、センター試験平均的に優秀な成績を収めるため、「優等生の町」とも言われる。また、食べ物の海鮮としても、ここは「奇」という特徴で勝ち抜く。「天下一の旨味」という美味を持ち、「中国海鮮の郷」も南通のことを指す。この江蘇省海城には、一体どれぐらい秘密の「うまみの裏ワザ」があるだろう。
01江海の合流点、目立たず海鮮勝地
海岸といえば、砂浜やココナッツの木、岩や波などを思い浮かべることが多いだろう。南通の海岸には白い砂も岩もなく、平坦な干潟になる。
長江は江蘇省を通過し、海に流れ込み、大量の堆積物を運んで河口にたまり、段々現在の淤泥質海岸になっている。南通の海岸もその中の一部である。黄海と東海もここで合流し、潮汐差が大きいため、プランクトンがここに集まっている。かつ長江には多くの栄養素が含まれており、適切な水温と相まってプランクトンは大量に繁殖し、それをまた魚、エビ、カニ、貝の自然な餌となっている。海辺の広い干潟は、アサリやマッドカタツムリなどの底生生物にも足場を与え、これらは渡り鳥の重要な供給源であるだけでなく、南通の人々のお気に入りの海鮮料理の食材にもなる。
刺蝦虎魚の油揚げ
干潟以外に、南通はまた中国4大漁港の一つである呂四漁港を有し、その隣の中国の8大漁場の一つである呂四漁場では、ポンフレット、イチモチ、カワハギ、タチウオ、カマス、ハイチェなど2,000種類以上の海産物が産出される。小洋口漁港も国家級の中心漁港であり、シーズンになると、何百もの漁船が出港し、魚、エビ、カニなどが満載で戻ってくる。
02マテガイ、ハマグリスープのうまさは、叩かれても口からはなしたくない!
南通には干潟、浅海、深海の海産物が集まっている。そして、南通の人々の中に「鮮」に関して、最も印象に残る一品はハマグリに違いない。南通の干潟では、素足で踊ったり、踏んだりする人がよく見かける。こうすることによって、土からハマグリが出てきたりするため、南通で人気な海辺のエンターテイメントで、「シー・ディスコ」という分かりやすく趣きのある鮮名をつけられた。 一般的なアサリ(花蛤・油蛤)に比べて、南通ハマグリの方が大きく、肉は脂がのっていて、がっちりとしている。昔から人気があり、清の乾隆帝時代には「天下一の旨味」と絶賛されたこともある。
「シー・ディスコ」ハマグリ踏み
画像/視覚中国
ハマグリの食べ方について、南通人は拘りがある。大きなハマグリは「煮込む」、中ぐらいのハマグリは「炒める」、小さなハマグリは「酔っぱらう」に最適。貝殻をつけながらの作り方として、定番なのはハマグリ蒸し卵。たまごの間に飾って、なめらかなたまごに歯ごたえの良いハマグリは最高。また、旬の野菜を使って、ハマグリ冬瓜スープを作ってみても良いかも。水分たっぷりの冬瓜とハマグリの組み合わせからできたスープはさっぱりしていて、少し甘い後味がくる。
ハマグリ蒸し卵
摄影 / maogeweiwu,画像/汇図網
殻を取り除いてから料理に入れるなら、ハマグリ炒め(跳炒文蛤)と鉄板ハマグリになるだろう。南通人は、ハマグリ炒めのことをまた「跳文蛤」(飛び跳ねるハマグリの意味)とも呼ぶ。それは、この料理の作り方は熱い鍋でハマグリを素早く炒めるのがコツな為、そのハマグリの姿が飛ぶように見えるから、名つけられた。この調理法によってつくられたハマグリはジューシーで、非常に美味しい。
そして、ハマグリ餅を作りたい場合は、小麦粉、ハマグリ、クログワイの微塵切りあるいは糸瓜を餅状にし、油で黄金色になるまで揚げる。外側はぱりっとして、内側は柔らかく、1口食べてから分かる、なぜ地元では「ハマグリ餅を食べると、すべての味が分からなくなる」という諺が流れる。
ハマグリ餅
摄影 / tuan,画像/汇図網
「マテガイ、ハマグリスープのうまさは、叩かれても口からはなしたくない!」の中のもう一つはマテガイ。南通如東人は、マテガイのことを海鮮の上等品と扱いされていて、宴会などでは常にメイン料理とし、「蛏領頭」(ハマグリのリーダーのような意味)とも言われる。
新鮮なマテガイは、卵がついているのは内臓を取り除く限り、炒めるのも、煮込むのも独特の風味がある。秋になるとマテガイは黄色く種がなく、干した後にゆっくりと火でスープを茹でるのに最適。この「白い煮込みマテガイ」は乳白色で、キャベツの千切り、卵の皮、キクラゲ、青菜などが入っており、白、緑、黄、黒などが見え、色や香りが絶品。
ハマグリスープ
摄影 / 阿照,画像/図虫・創意
03呛蟹(カニ料理)呛蝦(エビ料理)呛泥螺(ヒナギヌガイ)(呛:生きている海鮮をお酒で酔っ払いにさせて、漬物にする調理法)
南通海鮮のもう一つの大きな特徴は、生で食べること。その作り方法は「酔っぱらう」、別名「呛」、つまりお酒でマリネすること。お酒の染み込みにより、海鮮の美味しさが完全に引き出される。最も有名なのは「酔八鮮」(シャゴウ、紅海老、アカテガニ、ワタリガニ、ヒナギヌガイ、スガイ、蛏鼻、松蝦)であり、その中でも最も見逃せないのはヒナギヌガイである。
ヒナギヌガイは干潟の泥の中にしか住めない。非常に小さく、殻は人間の指の爪のよう、少し力を入れると壊れてしまう。体内にはちんでいがいっぱいなので、生で食べるのに少し手間がかかる。まず箸を使って殼外のお肉を固定し、外側に向かってお肉を引っ張ると、隠れているちんでいもつれ出すゆえ、きれいなヒナギヌガイのお肉が食べられるのだ。
酔ヒナギヌガイ
摄影 / 我是金運,画像/図虫・創意
毎年春の3月と4月は、紅海老の一番美味しい季節になる。お酒でマリネした後、お酒とネギの香りがエビの爽やかさを引き立たせ、柔らかく喉に滑り込み、それが南通人の記憶の奥底に刻まれる味。
シャコは南通で松蝦と呼ばれ、マリネの調理法で食べると、ジューシーで歯応えよく、非常に柔らかく口の中では甘みが広がる。
呛蝦
摄影/張美栄
南通人の生活は海鮮と切り離せない。海に面して海鮮を食べるのは代々繰り返しの日常生活。この目立たず海鮮の町もまた、舌で味わう江蘇省に一つ海風の香りをもたらすだろう。
—「正真正銘の風物」より