港へ行くなら必ず一度は香港トラム(叮叮车・ディンディンカー)に乗るべきだ。揺れる車内で、本当の香港の生活を感じることができる。香港トラムに乗って香港を眺めると、まるで移動式の展望台のようで、香港の中心部を行き来しながら、百年の歴史と変遷を目撃する。華やかな摩天楼があり、次の瞬間には人々の喧騒が溢れる古いダウンタウンが広がっている。
怪物大廈
北角は香港トラムの“巣窟”で、ここから出発する。1万人以上の人々がいると言われる怪物大廈を通り過ぎる。密集した窓の向こうには限られた空間に人の生活が詰まっており、狭くても清潔であり、地下には洗濯機店が多く見られる。おそらくこの狭いスペースにはもう洗濯機を置くスペースすら難しいのだろう。は香港の人々が限られたスペースで生き抜く工夫に感心させられる。
西営盤
“ディンディン”という音とともに、次の風景が広がる。――まるで山のような西営盤である。ここには「文化ミックス」の魅力に溢れた場所だ。地下鉄の出口から出ると、道路の両側には海産物店がずらりと並び、その中には半世紀以上続く伝統的な老舗もいくつかある。歩いていると、洗練された西洋風のレストランやカフェ、そして芸術的な雰囲気の濃い「画廊」がたくさん見られ、通りから一つ、二つ、三つと進むと、地形が急勾配になり、まるで山を登っているような感覚を味わう事が出来る。さらに下に進むと、港に至り山地、都市、教会、港が一枚に収まるような素晴らしい写真のような風景が広がる。
銅鑼湾
次の停留所は銅鑼湾、香港でも最大の繁華街の一つで、百万新街で手をつなぐカップルを見ていると、香港トラムも優しさに包まれているように感じられる。街の両側には大きな看板を掲げた屋台がたくさんあり、見る者を目移りさせる。
堅尼地城
もうすぐ終着点の堅尼地城に到着だ。この通りの先には大海が広がっている。 ロマンチックなこの場所には恋人や音楽がなくても夕暮れ時の堅尼地城、それ自体がロマンチックとなっている。
香港トラムはここで休憩し、船が汽笛を鳴らし岸に寄せると、降りる人々が急ぎ足に歩いていく、街角の小さな酒場には人が集まり始め、向かいの魚丸の店では淡い黄色の灯りが灯り始める…。すべてのものが一つのサインを伝えている“人生を楽しんで、夜が明ける前に”と。
旺角
夜明け前に、旺角に到着する。旧市街の旺角は、愛と憎しみの入り混じった場所だ。数多くのトレンドショップが並ぶこの街では、どんな人でも自分の居場所を見つけることができる。アニメや音楽、映画が大好きな多くの人々が、お気に入りのレコードを見つけるために何ヶ月もここで過ごす事が出来るだろう。
旺角の天橋に沿って歩くと、様々な通りが見えてくる。花園街、通菜街、金魚街…。金魚街を歩いていると、透明なビニール袋に入った金魚を見ることができる。袋には魚の種類と価格が記されており、この光景は映画で見たことがある人も多いのでないだろうか。金魚を眺めるのも楽しいが金魚を買う人たちを見る方もとても楽しい。
夜寝付けず散歩に出るお年寄り、彼らはラフな服装ですが、金魚を育てることには手抜きがない。金魚は彼らの生活の希望であり、金魚の購入は長寿を願うことでもある。また、おしゃれで洗練された女性も見かける、ハイヒールを履いて昼間は金融ビルの中を歩き回り、夜は自分の時間を楽しむ為、金魚街を訪れて散歩する。みな香港人としての生活への愛情の現れである。
ビクトリア湾
さらに先にはビクトリア湾が広がっている。香港島の明かりが灯り、まるで巨大な幕がゆっくりと開かれているようである。これがアジアで最も美しい夜景である。その時、目の前を船が通り過ぎる。船上には明るい黄色の暖かな光が灯っており、それは観光船だという事が分かる。観光客たちは海風を感じながら、対岸の夜景に酔いしれ、彼ら自身も対岸の観光客たちにとっての風景になっているのである。ここは観光客のだけではなく、香港の人々が夕食後に夕涼みの散歩をする場所としても人気である。
寄稿者:ペニシリン