青団子のない春は不完全なものだ。もし一つだけお菓子を選んで春を代表させるなら、それは青団子でなければならない。
畑に山菜が並ばれると、舌の先がザワザワする。ヨモギ、筍、コヨメナ……掘った地面に張っている山菜や、摘んだ枝先の芽などを皮に揉み込んだり、餡に包んだりして、鮮やかな春を青団子に盛り込む。
春の儀式感
一抹の艶やかな緑が春を携えて来る。一粒の青団子が、春を隠し味にしている。江南の人は初めて青団子を食べることを「嘗春」と言う。想いをあんに揉み込み、一粒一粒の玉のような緑の青団子の中に包み、美味を味わい、幸せを祝福する。
それぞれの地域の人々が青団子に対する好みに因んで、様々なニックネームをつけている。上海、寧波は「青団」と呼び、蘇杭では「青団子」、南京では」春団」あるいは「清明団」、紹興では「清明コウ」、徽州では「ヨモギ団子」と言う。もちもちとした青団子はしっかりしていて、ひと口かじると歯の間に香ばしい香りが漂い、甘口か辛口の餡が、たっぷりの幸福感をもたらし、春の儀式を届けてくれる。
物語のあるもち米団子
春に青団子を食べる習慣が古くからある。言い伝えによると、春秋の時、晋の文公重耳は介子推を山から押し出すために火を放ったが、誤って功労者とその母を殺してしまった。これを悔やんだ文公は、彼らの忌日に竈を使って火を焚くことを禁じ、民が「寒食を三日間食べる」ことに強いられた。寒食節には冷たい食べ物しか食べられないが、青団子はその季節性と保存しやすい特徴から、寒食の日にもっとも好まれる食べ物となった。
歳月の移り変わりに伴い、清明節は寒食節の伝統と融合し、祭祀の重要な祝日となった。青団子製作の伝統技術が大いに発揚され、伝承されている。特に清明節の期間には、各家庭では青団子を作って、食べる習わしがある。これは工程が細かくて、具材にこだわりが強く、種類も多く、季節性の強い伝統的な軽食である。
旬にふさわしく、新鮮さを味わう
かつて、青団子の「青」は普通ヨモギから来て、この種の植物は中国の古代の民俗生活の中で重要な地位を占めていて、続いて形成された「ヨモギ文化」も歴史が長い。今の市場の青団子の多くは漿麦草を使っている。これは相対的に入手しやすくて、色が青くて、味がヨモギの濃厚さがないが、清冽な草の香りがあって、青団子の最低ラインを守っている。さらに、ヌマガヤツリ、タムラソウ、ハハコグサ、サルムギなども青団子に使われている。
風に吹かれると草が動く、緑の柳が堤を掠める。春は山菜の芽吹きの時期であり、特に清明節の前後には、夜の雨や春のニラのように山菜が田畑に盛んに登場し、青団子を作るには持ってこいの時期だ。この時期になると、都心の人気店も、路地奥の老舗も、長い行列ができている。
万物を包む青団子
「きっとスイーツでしょう」というのが多くの人は青団子に対する第一印象だ。しかし餡を包んでいる青団子には、昔から甘口と辛口がある。甘党が愛するこし餡・ごま餡には、コクを出すためにラードを入れて、なめらかな食感を保ちながら、餡とごま本来の香りを残している。塩辛口には塩卵黄そぼろがお勧めする。これも定番の味で、厚みのあるそぼろ肉に大粒の黄身、餡がたっぷり入って脂がのっているがしつこくない。
以上の伝統的な餡を除いて、ルオスーフン(タニシ麺)、醃篤鮮(筍と塩漬け肉と豚肉の煮込みスープ)、小炒黄牛肉(シャオチャオファンニウロウ)、紅焼肉(ホンシャオロウ)、ドリアン……どんどん異なる餡が現れて、万物が青団子に「包める」。新奇な味を追求するグルメブロガーが続々とお勧めして、青団子は社交性のある「おしゃれなグルメ」にもなった。
蒸したてを食べ、もちもち食感で香りが口に残る、春の「野」がここに隠されている。
寄稿者:美食菌