世界初のお茶をテーマにした世界文化遺産、なぜ雲南省の景邁山なのか?

2023年9月17日、サウジアラビアの首都リヤドで開催された第45回世界遺産会議で、「普洱景邁山古茶林文化景観」が正式に中国の57番目の世界遺産に登録され、世界初の茶文化の世界遺産となった。

01世界初の茶文化遺産、景邁山にある生命の木から生まれた

雲南省は「山の国」である。瀾滄江流域の普洱市瀾滄ラフ族自治県にある景邁山は平均海抜が僅か1400メートルしかなく、雄大とも峻険とも言えない。しかしその千万年をかけて進化してきた温和な気候、起伏に富んだ山々、繁茂する古木が、この場所を古代人が焼き畑農業する定住の地にしていた。そして茶の木、まさに大自然がここに与えた最大の恩恵である。

茶の木の起源は人類よりもはるかに古い。第三紀のツバキ科の樹木から野生の茶樹に発展し、人類によって発見され、利用され、栽培され、大規模に栽培されるまでに数千万年を費やした。この長い歳月の中で、ひたすら南下する瀾滄江が世界初のお茶の原生地帯を生み出した。ここに長年住んでいる少数民族は、茶の木を「生命の木」とみなし、この原生地帯を世界で最も保存状態の良い、最も古く、面積も一番広い人工栽培の古茶園に変えた。

02古人知恵による「階層感」、「立体王国」の美しい茶畑

景邁山を散歩していると、人間がどれほど小さいかに突然気付く。枝になりすまして眠るナナフシ、ガジュマルの木に休息する太陽鳥、蘭の花のように可愛くて透明な「蘭花カマキリ」といった100種以上の鳥類や昆虫が動植物の「立体王国」に身を置いていることを思い起こさせてくれる。

標高の高い順から低い順に、景邁山は森林、古茶畑、伝統的な村落、農地、水田の複合的な垂直利用の風景を呈している。その中でも古茶畑は、最も原生態の「林下栽培」が最大の外見上の特徴となっている。森林と混生しているため、茶の木は強烈な山野の勢いを持ち、景邁茶も濃厚で蘭の香りを持ち、茶湯は渋みを感じるが、まろやかで甘みが持続的だ。

歴史資料によれば、明代以来、景邁の古茶は孟連土司(土地を管理する官職)に献上され、その後はさらに皇室の宗親にも納められた。前世紀中葉には、布朗族の人々はこの茶を国家の指導者に献上したことで、大いに称賛を浴びた。2001年には、景邁の古茶が国の贈り物としてアジア太平洋経済協力会議に参加する各国の首脳にも贈られた。プーアル茶が中国だけでなく世界中で注目を集める中、景邁山は卓越した古茶を生産することで、「新六大茶山」の一つに数えられている。

03独特な「インスタ映えスポット」、古代建築知恵の継続

景邁山の懸空式木造建築は「乾欄式建築」と呼ばれ、この建築物は遠い新石器時代に創造された。景邁の人々は樹木、土、石など、三つの簡単な原料で構築した。これは高く架けられ、野生動物から身を守るだけでなく、洪水も防ぐことができる。建物の一階にスペースを空き、二階は休憩スペースで、底階は家畜の飼育に使われ、非常に典型的な地域の特徴を備えている。

林の中に家があり、家の前に森が広がることが、景邁山の最も人目を引く景観の一つだ。景邁山の原住民は古茶林と村落を結合して、空間に強いグラデーションの考えを持ち、中核層、生活層、生産層、自然層の四大区域で区分している。

糯崗(糯乾)古寨を例にとると、寨の中心と周辺の公共空間が古茶林全体の中核層を構成し、寨の中心部に沿って乾欄式の民家建築が自然山水の地勢に順応して規則正しく配置されている。村民の日常生活と交流の圏層がこれで形成した。これらの群落の外には茶林と田園があり、村民の生産と労働の主要な場所であって、最外層には手入れが施されていない自然の山や原生林が残されている。

古代建築の魅力はここにある。景邁山の千年前の先住民はとっくに亡くなったが、彼らは土となり、子孫が身を隠す家々の背骨となった。彼らが知恵で作った建物は今も続いていて、誰もが思い出の家を思い出させる。

04象脚鼓の音が茶魂を呼び覚まし、景邁山にはお茶だけではない

景邁山に住む布朗族は、中国で唯一のお茶を生業とする少数民族である。四月に布朗族の村に入ると、お茶の香りが漂う朝、山林の間から象脚鼓の音は響き渡り、眠っているお茶の魂を呼び覚ます。この山にはタイ族、ラフ族、ワ族など十以上の少数民族が住んでおり、中国の少数民族の中で最も古く、完全な茶文化の民俗を共同で保存している。

代々お茶で生計を立ててきた民族として、お茶を料理に使うのは景邁原住民の得意技だ。お茶の宴はとても痛快である。古木のお茶と卵の炒め物、茶と牛肉の炒め物、茶葉先の冷やし料理は皆美味しくて、特に古い葉の油揚げ、揚げ物のサクッとした食感と、茶葉の苦さが混在して、食べた後に口が甘くなる。

食後は各民族の寺院に行って心を静める。景邁大寨のタイ族の大きいな金塔の下でゆっくりと空を眺め、それから翁基仏寺の中で歳月の洗礼を感じて、哎冷山茶祖廟で布朗族の茶祖である帕哎冷を拝んで信仰の継承を感受する。

寄稿者:天下に茶の香りがする

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