天津を北上する

慌ただしい日々には、思い立つとすぐ行動できる時間と情熱がありがたい。私は一晩かけて天津に行くことを決め、燦々たる午後に出発して、日没が夜になり、また夜が明け、そのままずっと車を運転して北上していた。

天津の初印象:半城は明るくて、半城はあっさりしている

天津に着いた最初の用事は、睡眠を補うことだ。目が覚めたあと地図を開き、街の様子をざっと眺めてみた。

蛇行する海河が市内を流れ、天津の街の風景は海河沿いに集中している。私たちはイタリア風情区(意風区)に住んでいる。北に行けば古風文化街とランドマークである「天津の目」があり、南に行けば五大道と天津博物館がある。

観光地ごとに訪れるではなく、街に沿ってぶらつくツアーを始めた。イタリア風情通りはひっそりしていて静かで、軽くて薄い光が冷たい彫刻の上に落ち、マルコポロ広場の上を鳩の群れがさっと通り過ぎていく。

広場の高いところに痩せていて憂鬱な顔がしているダンテ像を眺めると、異国に来たような気がする。イタリア風情区はもともとイタリアの租界地で、イタリアの古典的な建築様式が残っている。ゴシック、ロマネスク、バロックなどの様式のアーチ、回廊柱が、異国情緒豊かな街を形成している。

夕方時分、夕日が建物の上に落ちてきて、レストランに明かりがついた。スペインの情熱的なダンス曲が街に響き、フランスのけだるいメロディが耳をかすめる。ぶらぶらしているうちに日が暮れてしまう。夕焼けの残照が街の上空で消え、夜の触手がだんだん広がっていく。

これは天津が私に与えた最初の印象で、半城は明るくて、半城はあっさりしている。

五番街の太陽と西開教会

朝早く起きると、またさわやかで暖かい冬の日。色とりどりのサンザシの串刺しを手に持って、五番街の街区を歩いた。木から陽が落ちていて、街はまだらになっている。

五大道は一つの街区の総称で、主に馬場道、睦南道、大理道、常徳道、重慶道の5つの主要道路から構成されている。洋館の建築群がそのまま残っており、「万国建築博覧苑」と呼ばれている。

イギリス式、イタリア式、フランス式、ドイツ式……異なる国の建築様式の庭園式家屋を、今の人は各国の建築の標本として鑑賞することができる。

五大道の民国建築は少なくないが、大部分は遠くからしか見ることができない。慶王府は見学できる数少ない建物の一つ。

ステンドグラス、木製の回転階段、緑の芝生、華麗な噴水など、至るところにヨーロッパ風情を洩らしている。室内の精緻な木彫、園林の中の築山、あずまやが中国式の控えめさとこだわりを感じる。

五大道の近くに、にぎやかな商店街————浜江道がある。にぎやかな浜江道を通り抜け、車が行き交う通りのそばで、雄大で典雅なロマネスク式の建築————西開教会が見える。これは天主堂で、民国の初期にフランスの宣教師によって建てられたものである。

礼拝堂に入ると、市井の喧騒が潮のように後ろへ引き、静かで平和な雰囲気となった。ベンチに座り、壁の彩色な壁画や、優雅に跳ねるアーチのラインや、窓のステンドグラスのはめ込みなどを、静かに眺める。これが天津の建築にある美しさであり、そして旅の中で貴重な、静かなエピソードでもある。

ただ普通の毎日

以前から聞いたが、天津の西北角は地元の美食が集まる所である。朝早起きして、西北角へ地元の朝食を食べるつもりだ。

西北角に着いたとたん、朝食を買う勢いのすごい行列に、びっくりしてしまった。茶湯、輪巻き、老豆腐、揚げ餅、団子、熟梨膏……すべての屋台の前では並ばなければならない。行列の中にはよそから来た観光客もいれば、自分のポットを持って朝食を詰める地元の人もいる。

熟梨膏の列も長く、湯気が立っていた。面白いのは、底に穴の開いた木の甑(こしき)が使われている。作る時は、粉にされた米麺を木の甑に入れて蒸し器で蒸す。湯気が穴を通してしばらく蒸すだけで炊き上がり、お好みに味付けすることもできる。

炊きたての熟梨膏は香ばしくて香りが漂う。米麺は蒸すとしこしこして、さわやかな香りもついて、ジャムなしでも十分においしい。

もう一つ印象に残った軽食は、老味茶湯だ。親方は身構えると、片手で銅の壺に手を添えてお湯を流し、もう片方の手に握った米麺をゆでる。一口すくうと、穀物の豊かな香りに、ごま、サンザシ、アーモンド、レーズンの食感が加わり、あっさりする甘さともちもちした食感になる。

有名な天津大麻花と狗不理包子については、実際、天津の地元の人はあまり食べない。

食べて飲んで、海河に沿ってゆっくりと散歩する。海河沿岸では、おじいさんたちが日に当たりながら目を細め、カモメに餌をやったり、釣りをしたり、世間話をしていた。その話を聞いているととても面白くて、強い天津なまりで何を言ってもスマートさを感じる。

午後、古文化街区に行って、名士の茶店で漫才を聞く。一皿のひまわりの種、一人前のピーナツ、一壺のお茶、午後の時間を漫才師の説、学、逗、唱の中で過ごす。観客の多くは地元の人で、彼らは気性が熱くて気さくで、気になるとついつい二言三言やりとりして、会場を笑わせている。

天津人の体には伸びやかな楽しさがあって、四両で千斤の力を動かす余裕を感じる。彼らはエネルギッシュで、のんびりした気持ちで、熱い生活を日々送っている。

寄稿者:サツマイモの旅です

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