SF文学の分野において、劉慈欣の『三体』シリーズは世界中の多くの読者の心をつかんだ画期的な作品である。面白いことは、この一連の想像力豊かな饗宴のインスピレーションの源は、SFに満ちた未来都市ではなく、劉慈欣の故郷である筋金入りの重工業都市、陽泉にあった。
陽泉市は山西省で最も地味な地級都市で、面積も人口も最も少ない。山は陽泉を理解する鍵であり、山と丘陵が市域の大部分を占めている。太行山脈には、長い歴史を持つ多くの古い村落が隠されている。「地上の文物は山西にあり」ということわざがあるように、陽泉には現存する最古の木造建築である関王廟や、清朝(1636年-1912年)唯一の官立学校である冠山学院など、多くの遺跡がある。
陽泉山の麓では、また違った景色が広がっている。陽泉市全体が沁水炭田の北東部を占めており、石炭埋蔵量は100億トンに達する。陽泉市市内の行政区は現在も市街地、鉱山地域、郊外となっており、一目見るだけで工業時代の名残であることがわかる。
陽泉市の娘子関は中国の歴史の中で有名な関所の一つであり、多くの SFファンにとって、娘子関は SF 界の伝説である。 ここは1965 年に建設された娘子関発電所があり、かつては山西省、河北省、北京への電力供給を確保する上で重要な役割を果たした。 2006 年、娘子関発電所の技師である劉慈欣は、余暇を利用して長編 SF 小説『三体』を執筆し、雑誌『サイエンス フィクション ワールド』に連載を開始し、すぐSFファンの間で人気を集めた。
娘子関発電所は 2009 年に閉鎖されたが、意外とSFの世界が誕生した。現在、娘子関発電所に来ると、不思議な光景が目に入る。発電所は黒煙がもうもうとしておらず、外壁には約1,400平方メートルの壁画があり、映画『さまよえる地球』の古典的なシーンもある。壁を一周すると、「劉慈欣の宇宙絵画」を見終わるようだ。
寄稿者:白山