阿球は幼い時、台湾グルメと言えば「鹵肉飯」、というイメージがなんとなくあった。たしかに昔、街で鹵肉飯の店を見かけると、そこには必ず台湾という二文字があり、それはまるで「うちこそ本場の味だ」と宣言しているようだった。鹵肉飯は今でも変わらず、グルメ界における数百種類のライバルを相手に、台湾で不動の地位を占めている。もし台湾に行って鹵肉飯を食べないようでは、本当に無駄足だったとしか言えない。

@theshutterwhale
01 台湾B級グルメの王、鹵肉飯
美食家である蔡瀾は私に「台湾に来たら、高級レストランに行って食べちゃ絶対にダメだよ」と早くから忠告していた。台湾で真に美味しいものは全て街中のグルメに隠れているからだ。蚵仔煎、甜不辣、大腸包小腸など、数百種もの小吃(シャオチー、軽食)がここにはある。台湾はB級グルメの天国なのだ。

台湾には数え切れないほどの小吃がある
とはいえ、そんな熾烈な争いの中で、煮汁が香り、油の香ばしさと湯気をまとった鹵肉飯は、たちまちそのトップに躍り出た。作家焦桐はかつてこう語った。「台湾では、人煙あるところに必ず鹵肉飯がある。ここの多くの人は、乳歯が生えたばかりのころから鹵肉飯を食べ始める。そして年老いて全部が入れ歯になったとしても、やはり鹵肉飯からは離れられない。」

@tsangcccccc
しかし、台湾の街中に出てみると、様々な看板が掲げられていて混乱してしまうかもしれない。滷肉飯、鹵肉飯、魯肉飯、肉燥飯、爌肉飯など、どれも見分けが付きにくく、いったいどれを食べに行けばいいのかわからない。実は、文化的な空気や発展のテンポの違いによって台南風と台北風に分かれているだけで、これらはすべて台湾の正真正銘の鹵肉飯なのである。
同じ名でも、台南と台北で注文して出てくるものは、それぞれまったく違うかもしれない。
台南
ここの美食にはどれも伝統に裏打ちされた誇りがある。鹵肉飯は、ここでは「肉燥飯」とも呼ばれる。肉燥飯とは、白いご飯の上に豚の挽肉を乗せて醤油ベースのタレをかけたもので、一口頬張ると肉と油の香りが口中に広がる。もしあなたがいつものように「鹵肉飯」と頼むと、ここで出てくるのはおそらく「扣肉飯」だろう。これはタレをまとった肉が一塊、ご飯を覆うようにして乗せられているもので、飾り気はないがとてもガッツリしている一杯だ。台北の人々に言わせれば、台南のタレが台北のものより甘いために、台南の鹵肉飯はより甘めなのだそうだ。

@crappysotong

@minpoh
台北
一方、台北には一般的に3種類の鹵肉飯がある。「鹵肉飯」、「肉燥飯」、そして「爌肉飯」だ。鹵肉飯と肉燥飯はタレで煮込んだ肉を細かく刻んでご飯に乗せたもの。もし肉をまるごと味わいたいなら爌肉飯を頼もう。台南の甘めの味付けに比べると、台北の鹵肉飯は塩っ気が強く、椎茸などの具材も入っている。高菜や大根の漬物などの小鉢と一緒に食べるのも特徴だ。

台北の爌肉飯@limjenjen@lab_momomomo
実を言うと、鹵肉飯は昔の人々が食料を惜しんだために生まれた食べ方である。以前は食料を得るのが難しかった。そんな状況でも子どもたちみんなに肉を食べさせるため、賢いお母さんたちが柔らかく煮た肉をご飯に混ぜ込んだのである。それから発展を重ね、今では鹵肉飯はますます手が込んだ料理になり、タレや肉、米の細部に至るまでこだわりを持つようになった。
02 鹵、肉、飯の秘訣
鹵
鹵汁(タレ)は肝心だ。鹵肉飯の魂であるタレは、食感全体を高めてくれる。鹵肉飯をしっかりと混ぜると、米の一粒一粒にタレが絡み、口に運ぶと香りがたちまち口の中いっぱいに広がる。タレは主に醤油と米酒からできていて、そこに砂糖、ネギ、ニンニク、コショウ、シナモンなど、十数種の調味料や香辛料を合わせて作る。台南と台北では味に違いがあり、またそれぞれの店に門外不出の秘伝の味がある。うまい鹵肉飯はうまいタレあってこそなのだ。
肉
鹵肉飯の主役は肉である。脂っこすぎると飽きてしまうし、かといって脂身がまったくないとパサついてしまう。そこでどんな肉を使うかが鍵となる。最も良く見かけるのは、豚のモモ肉、肩ロース、豚バラ、そして首の肉だ。また、ゼラチン質たっぷりで艶やかに仕上げるためには、その日のうちに屠殺した新鮮な豚肉を使用しなければならない。こだわりはその切り方にも見られる。あまりに大きく切りすぎてもダメだし、小さく刻みすぎてもよくない。小さなサイコロ状か、もしくは長く細切りにすることで肉の食感が保たれ、口の中で溶けるような口触りになるのである。
飯
台湾は「稲の郷」とも称され、蓬莱米を好んで食す。蓬莱米は中国の東北米に少し似ていて、米粒の輪郭は丸く、はっきりとしている。そのほのかに粘り気を感じさせる口当たりは鹵肉飯にぴったりである。ふっくらと炊き上がった真珠のような米は、甘いタレと絡み、肉のジューシーさを保ちつつも、さっぱりと感じさせる。柔らかい肉が噛むそばから口の中で溶けていく味わいは、文句のつけようがない。

03 鹵肉飯の店に隠れている台湾の懐かしい味たち
/金峰魯肉飯/

@carly_in_hk

@crappysotong
このお店は外せない。というのも、地元の人間と外から訪れる人間、そのどちらからも愛される鹵肉飯のお店は台湾全土と言えどもこの一軒だけだからだ。ここの鹵肉飯は脂身が少なめであっさりとしていて、中に入っている椎茸やキュウリの漬物はさっぱりしていて美味しい。店にはいろいろな種類の粉(フェン。でんぷんで作った食品)、スープ、小鉢も選ぶことができ、コスパが非常に高い。とはいえ、11時を過ぎると長い列ができるかもしれないので、早めに来店したほうがいいだろう。このお店の人気はそれほど高いのだ。
住所:台北市羅斯福路一段 10‐1号
大来小館

@mmminimano
路地裏のこのお店は、場所を変えることなく20年以上店を続けてきた。夫婦が厨房と接客を分担しながら切り盛りしている。この店の鹵肉飯には脂の乗りがちょうどいい首肉が使われている。豚足の醤油煮も外せない看板メニューだ。ほかにも特色ある台湾料理がたくさん揃っていて、おすすめである。
住所:台北市大安区永康街7巷2号1楼
江川肉燥飯

@donkey0404

@eat.fun.tainan
この店は長く台南に住んでいる人達が心の中で大切にしているお店だ。というのも、安くて美味しいからだ。ここの肉燥飯は色も味も濃く、口当たりはしっとりとしている。しかも、甘さの中にわずかに甘草の香りがして、ほかにはない新鮮感が味わえる。現地の人々の一番人気は、肉燥(そぼろ)、おかず3つ、そして肉を頼み、さらに肉燥飯を加えたセットだ。大変な毎日を頑張る自分への一番のご褒美なのである。中でもオススメなのは、パリパリとした食感にうっすらと塩味が利いた煎肉鯽仔(イボダイ焼き)だ。
住所:台南市中西区民族路三段19号
開元路無名虱目魚

@rainwhite_huang

@kelly_foodlife
肉燥飯に虱目(サバヒー)という魚で作ったスープを合わせるのがよく見られる台南の朝食だ。この店が出す鹵肉飯と魚のスープの朝食セットを食べるために台南に引っ越して来たと言う人も少なくない。店のメニューはこの2品だけである。魚のスープには、つみれ、魚の腸、浮き袋、皮が入っていて、何がどれだけ入るかは店のお任せである。とはいえ、まだ日が明けていないうちから「魚腸売り切れ」という看板が掛けられる可能性もあるため、食べてみたいなら早い時間のうちに店へと急いだほうがいいだろう。
—「takumi」より
























